日本フットサルリーグ(以下、Fリーグ)は、発足から今年で17年目となる。そんな中、名古屋オーシャンズは過去16回のリーグのうち、15回もの優勝を果たしている。アジア選手権でも4回優勝。2020年ワールドカップでは6人が日本代表チームのメンバーに選ばれた。2023年の日本代表にも、名古屋オーシャンズの選手は4名が入っている。

まさにチームとして日本の頂点に君臨する名古屋オーシャンズだが、だからこそ国内フットサルの課題も多く感じている。特に近年、これを痛感した出来事があったようだ。今回、チームマネージャーを務める渡邉有輝さんに詳しくお話を伺った。

若手から育てられ、二部練習のできる恵まれた環境

現在、名古屋オーシャンズは愛知県知多市にある「オーシャンズフィールド」を拠点として活動している。トップチームの他に大学生世代のサテライトチーム、さらに小学生~高校生のスクールも展開。その環境を求め、全国から選手たちが集まっているのだ。

「中学生から高校生のスクールには1,000人程度の子どもたちが所属しており、U15~18では愛知県で優勝できるレベル。小学生も、もう少しで全国に手が届きそうなところです。ユースとして育成しているのはU15以降で、さらにレディースチームもあります。また、大学生が対象となるサテライトチームもあり、全国から選手たちが集まっていて、その人数は27名ほど。サテライトから、トップチームへ上がっていく選手もいます。」

サテライトチームには18~23歳まで所属することができ、そのまま名古屋オーシャンズのトップチームへ入れるチャンスが広がる。それ以外でも、他チームからスカウトを受ける選手も多いという。

「二部練習ができる環境が整っているので、その環境を求めて訪れる選手は少なくありません。実際、サテライトで伸びる選手は多く、私たちも基本的には自分たちでトップに上がれる選手を育てたいと考えています。アマチュアの中で見れば、恐らく練習は日本一と言っても過言ではないでしょう。だからこそ、並みの選手でも他チームなら主力で活躍できるレベルに育ちます。実際、サテライトチーム出身の選手はFリーグにもたくさんいるんです。」

東海リーグ内において、なかなか二部練習のできる環境というのは難しい。それは、ほとんどのチームが社会人として競技しており、仕事との両立が必要だからだ。取材時点で他チームを含めると、自分たちの施設を持っているのは3チームだけ。他チームは、基本的に市の体育館や民間のフットサル場などを借りて練習している。サテライトを含めた若手から自分たちで選手を育てられる環境は、名古屋オーシャンズが強くあり続けられる理由の一つと言えそうだ。

拠点を失った不安が自信へとつながった

では、なぜ名古屋オーシャンズはこうした環境を維持できているのか。渡邉さんによれば、これは施設だけの話ではなさそうだ。多くのチームにおいて、選手たちは社会人として働きながら競技している。しかし、名古屋オーシャンズではサテライトチームこそ給料は出ないものの、トップチーム選手には給料が支払われている。つまり、日々競技だけに集中できる環境なのだ。

「日頃から支えてくれる、スポンサーのお陰が一番大きいですね。環境が整っていないと、実際のところ何もできません。拠点となる施設を建ててくれた、メインスポンサーあってこそチームが強くあれます。スクール運営による収益、または観客動員によるチケット収入もありますが、やはりスポンサーの存在があればこそです。」

チーム運営には、例えば遠征などもお金が大きく掛かる。移動の交通費はもちろん、遠方であれば宿泊も必要だ。もちろん、施設の建設・維持に求められる費用も膨大だろう。実はこうした周囲からの支えや現在の環境について、その有難さを痛感する出来事があったという。

「もともと、私たちは名古屋市港区にあるオーシャンアリーナを拠点として使っていました。しかし、所有していた企業が買収されたことをキッカケに、使用できなくなってしまったんです。買収後すぐは格安な賃料でコートを借りて継続していたのですが、契約更新のタイミングで正規金額での支払いが必要に。それでは大きな赤字になってしまうため、スポンサーの支援もあり新しく施設を建てることになりました。」

新しい施設が完成するまでは約1年間。では、ここまでの期間をどこで練習するのか、大きな課題が浮上した。拠点を持たない中、名城大学と提携して体育館を使わせてもらうことに。しかし、何か学校イベント等があれば使えないし、これまでとは勝手が違ってくる。

「1年間は名城大学の体育館を、空いている時間を使わせてもらいました。でも、練習したいけど使えないときは、公共のスポーツセンターなどを借りなければいけません。この経験で、他チームの大変さが分かりましたね。施設予約や移動、調整、送迎など、色んな時間を割かれてしまいます。でも他チームにとっては、これが当たり前なんですよね。ですから、これは良い経験になったと思います。改めて、環境を整えてくれるスポンサーやパートナーへの感謝がこみ上げました。結果としてその年も優勝でき、自分たちのやってきたことは間違っていなかったのだと、今では自信につながっています。」

その後、オーシャンズフィールドが完成。名古屋オーシャンズは、2022年4月から知多市へと拠点を移した。

スポンサー獲得という課題

他チームも同じように施設を持てれば、選手もそれを求めて集まるのかもしれない。名古屋オーシャンズは施設があり、さらにトップ選手たちに年俸を支払っているからこそ、その環境で自分を伸ばしたいと多くの選手たちが集まっている。しかし、実際のところ環境が整っていても、生活できるまでの給料をもらえるチームは少ない。

「完全にプロ化して選手たちに給料を支払っているのは、名古屋オーシャンズを含めて3チームだけです。あとは主力がプロ契約選手として数名おり、あとは別という状況になっています。年間順位を見てみても、やはりプロ化しているチームが上位だし、プロ契約している選手が多いほど上位に入っているんです。それだけ、良い選手が集まりやすいということでしょう。プロ契約している選手は、他選手よりも長く練習時間を確保できます。ですから、個人としてコンディションは上がるのですが、だからといってチーム全体はそう簡単にいきません。」

Fリーグ自体、まだメジャーとは言えない。そのため、なかなか良いスポンサーが付かないことが、プロチームの増えない要因の1つと言えるだろう。自分たちで施設を持ち、選手たちが練習に打ち込めるチームが増えれば、それだけフットサル全体のレベルが上がるのではないだろうか。スポンサーが付けば環境は整うが、強くなければスポンサーが獲得しにくい。ここに、なんともし難いジレンマがある。

「看板を出せるからといって、手を挙げてくれる企業はほとんどありません。だから、お互いにプラスとなるような企画などを考えないと、協力してくれないんですよ。名古屋オーシャンズでは、よく企業とのコラボイベントを行っています。例えばルーティンな製造作業に取り組む人の多い職場で、コミュニケーションの機会としてフットサルを行う。実際、順位を決めて優勝チームと名古屋オーシャンズが対戦という企画は、とても喜んでもらえました。あるいは、バーベキュー場を運営しているスポンサー企業なら、大会・イベント後に会場として使わせてもらいバーベキューする。こうした、相手側に寄り添った企画が、スポンサー獲得には必要だと思います。」

例えばJリーグなどなら、スポンサーしていること自体がステータスとなり意味を持つ。しかし、まだフットサルにそこまでの露出はない。名古屋オーシャンズの試合はインターネットで生放送されているが、それでも看板を出すだけではメリットが少ないようだ。

「Fリーグは17年目ですが、優勝はたくさん経験してきました。もちろんチームの優勝は嬉しいですが、今はそれよりもリーグ全体のレベルが上がり、環境の多いチームが増えることの方が大切だと思っています。日本のフットサル全体がレベルアップすれば、ワールドカップなどでも上位を目指すことができ、メディアでも多く取り上げてもらえるようになるでしょう。そうした注目は、スポンサーにとっても大きな意義になるはずです。今はそれが難しく、一人勝ちしてしまうところがある点が課題ですね。」

フットサルコートはよく目にするようになったが、確かにメディア等ではあまり見る機会がない。そのためには、国内全体に向けて、もっとフットサルの魅力を知ってもらうことも必要なのだろう。

ファンを増やし、自走できるチームへ

名古屋オーシャンズはチームとして、社会貢献活動にも力を入れている。それは、フットサルという競技を、もっと広めていきたいという思いがあるからだ。

「名古屋や知多にも、まだフットサルや名古屋オーシャンズを知らない人が少なくありません。ですから、何か依頼があれば、すべて受け入れるスタンスです。例えば学校と連携し、色々な取り組みができる体制も作っていきたいですね。」

スポンサー獲得と同じように、観戦者を含めて多くの人々にフットサルを知ってもらうことは、国内でフットサルを盛り上げるために重要なポイントとなるだろう。しかし、渡邉さんによれば、この点においても大きな課題があるという。

「個人的に、これまでスペインやブラジルなどのフットサルを見てきました。そこで感じたのが、日本との応援対象の違いです。サッカー先進国は、自分たちの住んでいる地域が拠点などの理由で、特定のチームを応援します。もちろん好きな選手はいますが、例えば移籍したからと言ってチームへの応援はやめません。でも、日本だと好きな選手がいて、その選手が移籍すると応援チームまで変えてしまうことが多いんです。もちろん、これは文化の違いですから、それに合わせて取り組んでいくことは必要でしょう。スペインやブラジルは一生涯ずっと同じチームを応援し、これが代々受け継がれていますが、日本でこれは現実的ではありません。でも、この違いを使ったイベント等を行えば、面白いのではないでしょうか。具体的にどうすれば良いのかは検討事項ですが、きっと打開策はあると思っています。」

観客動員によるチケット収入も、チームにとっては収益源の一つだ。しかし、フットサルという競技に取り組んでいる人は増えたものの、なかなか観戦するまでには至らない。そこで、選手と一緒にフットサルする企画を、参加する選手を日替わりにして行った。すると、選手ごとにファンが付き、そこに人が集まるのだという。ここにも、日本がチームではなく選手を応援するという、一種の特殊性が垣間見える。

「現在、知多市の体育館でもフットサルができるようにしてもらっています。そうすれば、周辺地域の人たちにチームを知ってもらえますよね。特に、子どもたちがとても大切です。子どもが応援してくれるから、親が一緒に連れて行く。そうすると親も知ってくれるので、子どもがチームや選手のファンになってくれることが重要だと思うんです。」

現在はスポンサーによる支援が大きいが、最終的には自分たちで施設を運営できる、やりくりできるような規模にしていきたいと渡邉さんは話す。いくら応援してくれていても、何かのキッカケで、いつスポンサーが離れてしまうか分からない。自走できる状態を作ることは、確かに長い未来を見据えれば重要なことだろう。

「これまで、サテライトチームのように年俸を確保できなかったとしても、地元の選手を育てられる流れは定着させてこられました。ちゃんと選手が育てば、優勝できなくてもチームとしては成り立ちます。例えば地元選手だけで構成できたら、それだけ応援サポーターも増えてくれるかもしれません。最近、そういうチームもありなのではないかと思っています。だからこそ、地域に根付くために、自分たちでやれるキャパで取り組んでいくことが重要。いろんな面で課題は多いですが、一歩ずつでも進んでいきます。」

独自の工夫や取り組みを行いながら、フットサルの普及やチームのレベルアップ、そして選手育成など多方面に力を注いでいる名古屋オーシャンズ。課題の解決、そして目標の達成は、決して容易ではないだろう。しかし、渡邉さんのお話を伺っていると、だからこそ遣り甲斐があるのだとも感じられた。大勢が各地のコートに足を運び、フットサルの試合に熱狂的な声援を送る。そんな姿を見られる日は、そう遠くないのかもしれない。

名古屋オーシャンズ 公式ホームページ

By 三河 賢文 (みかわ まさふみ)

New Road編集長。“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表、NPO法人HASHIRU理事。

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