New Road(ニューロード)

menu

公認スポーツ栄養士が伝える「パフォーマンスが変わる」補食の重要性

運動には多くのエネルギー源・栄養素を必要とするが、これらが不足すると当然ながらパフォーマンスは下がる。この不足が起きないよう、食事で補えないエネルギー源・栄養素を補う軽食が“補食”だ。「練習に集中できない」「体力が持たない」「ケガをしやすい」という方は、一度この補食を見直す必要があるかもしれない。

補食を上手に取り入れることは、アスリート、運動愛好家のパフォーマンスアップにつながる。本連載では公認スポーツ栄養士・馬淵恵さんに「パフォーマンスを上げるための食」について伺い、5回に分けてお届けしている。今回は、補食を取るタイミングや内容についてお伝えしよう。

パフォーマンスアップに欠かせない補食とは

公認スポーツ栄養士・馬淵恵です。今回は、補食についてお話します。

皆さんは、補食を意識的に取り入れているでしょうか。私は補食を取り入れたことで、練習・試合のパフォーマンスが大きく変わった選手たちをたくさん見てきました。ですから、補食の意識をより多くの方に持って欲しいと思っています。そんな補食の主な効果は以下の通りです。

  • 持久力、集中力のアップ
  • ケガの予防
  • 疲労回復効果

食の土台はあくまでも基本の3食ですが、状況によって食事だけでは摂りきれない栄養素・エネルギー源があります。例えば「練習直前で食事が食べられない」「増量しているが1食で目標の量を食べきれない」など、上手く食事を食べられないケースもあるでしょう。そんなときこそ、補食を有効に活用してください。規則的な3食の食事は身体を作り、補食には運動時のパフォーマンス・リカバリー力を上げる役割があります。

運動前の補食は炭水化物が中心

補食を取るタイミングは、基本的に運動する前または後の2つです。

<運動前の補食>

運動前の補食は、「練習・試合にエネルギーを満タンの状態にしておくこと」が目的。運動中のエネルギー不足によるパフォーマンスや集中力の低下、ケガのリスクを防ぐためです。

運動前の補食は「炭水化物(糖質)」が中心となります。脂質・たんぱく質は消化吸収に時間がかかりますので、運動前は素早くエネルギーになる炭水化物が中心です。ただし、運動に支障のない程度の量にしましょう。お腹いっぱいで動きが悪くなっては、せっかくの補食の意味がなくなってしまいます。運動前の補食は、以下がタイミングと内容の目安です。

  • 2〜3時間前まで:固形物・軽食(おにぎり、バナナ、カステラなど)
  • 30分前まで:ゼリー、飲料など(エネルギーゼリー、スポーツドリンク、ジュース、ブドウ糖タブレットなど)

食事は、なるべく3時間前までに済ませるようにしきましょう。胃の中の食べ物が消化され、腸に届くまでの所要時間は2~3時間です。ですから、固形物は3時間前までに取るようにします。

ただし、競技や個人によって違いはあります。私が担当する長距離実業団のチームには、「競技前にお腹に何か入っていることは避けたい」という選手もいました。このチームは朝食前のトレーニングで、水分以外は何も摂取しない状態で練習していたのです。食事指導が始まり、空腹で練習してから朝食後の血糖値を測定したところ、急激な血糖値の上昇が見られました。この結果から、エネルギーゼリーやスポーツドリンクなどでエネルギー補給して練習するようになり、集中力が保ててケガのリスクも軽減し、パフォーマンスも向上するようになりました。個人の感覚も大切ですが、空腹で運動することのリスクをきちんと知った上で補食を取り入れることが望ましいでしょう。

<運動後の補食>

運動後の補食は、炭水化物とたんぱく質が中心です。その役割は、消耗したエネルギー源の補給や筋肉の修復、疲労回復になります。炭水化物は消耗したエネルギー源の補給、たんぱく質は筋肉や細胞などの身体の修復に不可欠です。なるべく早いタイミングで補食を摂取しましょう。

運動後の補食の重要性がわかるエピソードをご紹介します。ボクシング世界チャンピオンの選手で、試合後に風邪を引きやすい選手がいました。試合が終わって気が緩むのでしょう。アスリートにはよくある話です。その選手は試合後、インタビューや関係者への挨拶まわり、帰宅準備で食事まで時間が空いてしまうとのことでした。つまり、試合で消耗している身体にエネルギー源・栄養素の補給ができていなかったのです。

エネルギー源・栄養素が不足すると、免疫力も低下します。そこで、試合後にオレンジジュースと小さいおにぎりを食べてみると、風邪を引かなくなりました。このように、運動後の補食は疲労回復につながり、次戦への身体づくりにも大きく関わってくるのです。

練習と試合では補食の内容やタイミングも変わってくる

ここまで、補食の役割をお伝えしました。しかし練習前と試合前では、補食の意味合いも変わってきます。

練習前の補食は「身体を作る」「練習中のエネルギー源を確保する」ためのもの。学生は学校の授業によって、または社会人も何らかの都合によって、固形物を練習の2時間前までに摂取できない場合があるかもしれません。しかし、それでも身体の調子を見ながら摂取する必要があります。

これに対して、試合や大会前の補食は「勝つ」「最高のパフォーマンスを出す」ためのもの。胃腸に負担をかけない補食内容と、摂取する時間の調整が必要です。先ほどご紹介した補食メニューの内容と時間を参考にしてください。ただし、これは個人差があります。どう調節するかは日常から補食を意識し、ご自身の体調を把握する必要があるのです。

補食に適した食べ物

補食でおすすめなのはおにぎりです。その理由には、以下のようなものが挙げられます。

  • 炭水化物が中心である
  • 具材からたんぱく質も摂取できる
  • 手軽に持参できる
  • 安価で経済的
  • よく噛める

おにぎりの特徴には、まず手軽で持ち運びがしやすい点があげられます。そして練習前は炭水化物が中心なので「梅干し入りのおにぎり」、練習後ならば炭水化物+たんぱく質で「シャケ入りのおにぎり」と、シチュエーションに合わせた具材を入れることができます。しかし、夏場は食中毒の心配もあるでしょう。その際は、コンビニなどを上手に活用して食材を選んでください。

<練習前の補食の例(炭水化物中心)>

梅干しのおにぎり、バナナ、あんぱん、カステラ、あんまん、スポーツドリンク、スポーツゼリー飲料、オレンジジュースなど。

<練習後の補食の例(炭水化物+たんぱく質)>

シャケ入りのおにぎり、チーズ入りパン、肉まん、飲むヨーグルト、牛乳など。

練習後はオレンジジュースにサラダチキン、さけるチーズを組み合わせるなどの工夫もよいでしょう。私が夏場に現場で活用しているのは冷凍フルーツです。暑さで疲れた選手たちのクールダウン効果と水分・栄養補給に最適ですし、最近はコンビニでも買えるようになりました。このように、状況に合わせて食材を選んでみましょう。

補食選びで注意したいこと

例えば、補食にアイスクリームはどうでしょうか。確かにアイスクリームは、エネルギー源・タンパク質が取れるかもしれません。しかし、ここで考えて欲しいことは、補食がおやつではなくエネルギー源・栄養素を補うためのものだということ。もちろん、アイスクリームしか喉を通らないという場合もあるでしょう。そのため絶対にNGではありませんが、あくまで補う食事であると考えて食材を選んでください。身体は食べたものだけで作られるということを忘れてはいけません。

もう一つ気をつけて欲しいのが、3食の食事に影響を及ぼさないことです。補食で満腹になり、食事が食べられないようでは意味がありません。食事に響かない程度の量を、状況に合わせて選ぶようにしてください。練習後にプロテインを摂取する方は多くいらっしゃいますが、プロテインだけに頼らず、食事からの補食も心がけましょう。

本番を見据え普段から自己管理ができるように

補食の習慣づくりは大切です。現場を見ていると、自分の身体を知らない選手が多いように感じます。「どんなタイミングで、どんなものを摂取したらよいのか」を自身で考え、調整することは結果を残すためにも重要なこと。ここで取り上げたように補食の目安はありますが、個人によって好みも感覚も違います。全てにおいて共通することかもしれませんが、私はどんな状況下でも自己管理できることが、結果を残す選手の条件だと考えています。

連載最後となる次回は、食事のマナーとメンタルがパフォーマンスに影響を与える「食事とメンタルの成長」についてお届けします。

[プロフィール]

馬淵 恵(まぶち めぐみ)
FREC株式会社 代表取締役社長。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士、管理栄養士、健康食育シニアマスター。一般社団法人食アスリート協会理事・主任講師、株式会社フィジカルレストラン取締役 統括管理栄養士。

共立女子大学食物学科管理栄養士専攻を卒業後、大手食品メーカーで営業を担当。結婚出産を経て2013年「食を育てる」をコンセプトとしたFREC株式会社設立。大手エステや行政、病院、企業での生活習慣病、ダイエットなどで、延べ5万人を超える方々に食のアドバイスを提供。全国で幅広い年代に向け食と健康について発信している。

現在はスポーツ食育を中心にプロ野球選手や実業団の陸上チームや水泳クラブ、高校野球・ラグビー・サッカー、大学ラグビー・アメリカンフットボールなどで、栄養サポートを全国で展開している。企業健康講演・新人社員研修・行政学校での食育講演など年間50本以上の実績。妻として、働く1人の女性として、女性が自分らしい働き方を見つけられる仕組みづくりをミッションに様々な活動を行っている。二児の母。

・著書かんたんやさしい食べるを変える 米トレ(報知新聞社出版)。

Facebook】【Instagram】【Twitter