スポーツサプリメント市場には男性向けのほか、ジュニアや女性をターゲットにした商品も多く出回るようになってきた。そもそもサプリメントとは、食事で摂取できない栄養素・エネルギーを補助する役割の食品だ。これらが食事で摂取できていれば、サプリメントを摂る必要はない。しかしスポーツをする際、状況に合わせてサプリメントを上手く活用することで、高い効果を期待することもできる。だからこそ「なんとなく摂取する」のではなく、リスクを知り、本当に必要なものだけを必要なタイミングで活用すべきだろう。

今やコロナ禍における健康意識の高まりもあり、2020年は機能志向食品(サプリメント)市場が9,483億円売上の見込み(富士経済調べ)、今後さらに市場拡大が予測されている。しかし、本当にサプリメントは必要なのだろうか。そこで、ここではスポーツ時におけるサプリメントの基本的な考え方や摂取が必要な基準、選び方について解説しよう。

・参考:機能志向食品(サプリメント)の国内市場調査

目次

サプリメントは万能薬ではない

そもそもサプリメントに法律上の定義はなく、栄養を補助する食品とされている。食品には国の制度に基づいて、以下のように機能性等を表示することが可能だ。

  • 特定保健用食品(個別許可型)
  • 栄養機能食品(自己認証性)
  • 機能性表示食品(事前届け出制)

しかしサプリメントは、機能性を表示できない一般食品に分類される。そのため、効果や安全性が不十分なサプリメントが多く市場に出回っていることを、まずは念頭においておこう。この点においては、さらなるガイドラインの確立と科学的検証が必要とされている。

中には、「私はそんなにサプリメントを摂っていない」という方もいるだろう。しかし実のところ、スポーツサプリメント食品は身近に思いのほか多く存在する。サプリメントと聞くと錠剤や粉末、カプセルなどを想像するかもしれないが、他にもスポーツ飲料やエネルギーゼリー、シリアル入りのバーやブロックなども、スポーツ用サプリメントに分類されるのだ。そう考えて見ると、意識せず口にしているものがあるのではないだろうか。

もちろん、状況によって必要な場合もある。しかし、効能だけを見てサプリメント頼りになることは勧められない。その理由として挙げられるのが添加物だ。ラベル表示にある原材料を見てみると、サプリメントの原材料にはカタカナ表示のものが多く、そのほとんどが添加物である。ここから分かるように、サプリメントは超加工食品なのだ。そのため、過剰摂取はリスクを伴うことも知っておこう。

サプリメントを有効活用するタイミング

スポーツにはエネルギーや水分、ミネラルなど、多くの栄養素が必要になる。例えば運動直後は筋肉の修復やエネルギー補給が求められるが、すぐに食事を摂取できない状況もあるだろう。そうした場合は、炭水化物+たんぱく質を補給できるサプリメントを活用することも有効だ。

また、運動前に素早くエネルギーや栄養素を補給したいなら、食べ物から摂取するよりも粉末や錠剤のサプリメントの方が消化吸収も早く、有効なケースもある。あるいは試合と試合の間の補食、練習前後の補食に活用することも少なくない。

あるいは合宿や海外遠征などで、バランスのよい食事がとれない状況も考えられる。そのため、不足しがちな栄養素を補うべく、マルチビタミンなどのサプリメントを持参するケースもあるだろう。

サプリメントの使用目安の年齢は高校生から

近年はジュニア期用のサプリメントやプロテインが売場に並び、子どもの頃から必要に感じるかもしれない。しかし、基本的にサプリメントの摂取は、高校生から必要に応じた場合のみと考えてほしい。

ジュニア期は「食事から心と身体がつくられること」「しっかり噛むこと」の大切さを養うために重要な期間。安易にサプリメントの効果を期待して摂取すると、これらを養うことができない。前述のように試合と試合の間の補食、あるいは練習前後の補食に活用するケースもあるだろう。しかしジュニア期だけではないが、あくまでエネルギー・栄養摂取の基本は食事からである。

なお、よく“噛む”ことで得られる効果には、以下のようなものが挙げられる。だからこそ、心身を育むジュニア期には、サプリメントに頼らない身体づくりが重要なのだ。

  • 唾液の量が増える
  • 消化吸収の促進
  • 肥満予防の効果
  • 内臓、脳の働きを活発化
  • あごの筋肉の発達
  • 脳の血流の促進
  • 活性酸素物質の軽減

プロテイン使用目安は、高校生からの増量や競技に必要な場合においてのみ。私が以前サポートしたラグビー競技の高校生は、増量できずに悩んでいた。話を聞くと、増量のために朝練習と午後練習の終わり、夕食前、寝る前にプロテインを摂取していた。彼の悩みは毎朝トイレで下してしまうため、朝ごはんを食べることが怖くなり、十分な食事量がとれていなかったこと。そこで、まずしっかり食事量をとれるよう寝る前のプロテインをやめたところ、お腹が下ることがなくなった。さらに朝食もしっかり食べられるようになり、82kgだった体重が3ヶ月で目標の85kgに増量できたのだ。

増量のために摂取していたプロテインだったが、タイミングと量を間違えてしまうと、このように効果を発揮できないケースもある。そのため、サプリメントの効果が本当に得られているのか、必ずご自身で検証してほしい。

サプリメントを選ぶ方法

サプリメントを選ぶ際は、下記の2つを必ずチェックしよう。

<パッケージ(表示)をよく見る>

  • 原材料は何か
  • 栄養素・成分の配合
  • 天然由来か化学合成か
  • どんな添加物がどのくらい使われているのか

<たくさん含まれている原料を確認する>

パッケージには、含有割合の多いものから順番に表示されている。摂取したい栄養素が何番目に並んでいるのかチェックしよう。

品質へのこだわりなどを謳うメーカーもあるが、私たちが製造過程までチェックすることは不可能だ。大前提として、まずはエビデンス(科学的根拠)がしっかりあるもの。また、栄養成分を知りたい場合には、国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所の下記サイトも参考にしてみてほしい。

・参考:国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所『「健康食品」の安全性・有効性情報』

必要かどうかは普段の自己管理&観察から

アスリートやスポーツをする人に、サプリメントを摂取する人は多くいる。しかしその理由はと言えば、「筋肉をつけたいから」「勧められたから」「先輩が飲んでいたから」と漠然としたものが少なくない。例えばそのサプリメントの摂取をやめても、「効果が変わらなかった」というケースもあるだろう。例えば以前、貧血があって鉄剤を常飲している女性がいた。しかし症状が改善されず、よく食事内容を聞いてみると、そもそもの食事量が足りないことからエネルギー不足で貧血になっていたということがあった。

そのサプリメントは、果たして本当に必要なのか。自分の身体のことは、結局のところ自分自身にしか分からない。日頃から自身の身体をいかに観察しているかが、まずは大前提の話だろう。

・参考文献:「栄養科学シリーズNEXT 運動・スポーツ栄養学 第4版」(講談社刊)

[著者プロフィール]

たかはし 藍(たかはし あい)
元初代シュートボクシング日本女子フライ級王者。一般社団法人食アスリート協会シニアインストラクター。出版社で漫画や実用書、健康書などさまざまな編集経験を持つ。スポーツ関連の記事執筆やアスリートに適した食事・ライフスタイルの指導、講演、一般向けの格闘技レッスン等の活動も行う。逆境を乗り越えようとする者の姿にめっぽう弱い。
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By New Road 編集部

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