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公認スポーツ栄養士が伝える、ジュニア期からの“強さの土台”をつくる食

ここ数年、食についてさまざまな情報が飛び交うようになった。情報があることは良いことだが、反対に情報の取捨選択ができず、どのように取り組んでいけば良いのかわかりづらいという声も耳にする。そこで今回は、公認スポーツ栄養士・管理栄養士の馬淵恵さんに「パフォーマンスを上げるための食」についてお話を伺った。その内容について、5回に分けてお届けしよう。

第1回目は「ジュニア期からつくられる食の土台」について。スポーツする方はもちろん、スポーツする子どもの親御さん、指導者等に関係している方には、特に意識して取り組んでもらいたい内容となっている。ジュニア期の取り組みはスポーツだけではなく、その後の子どもたちの未来にも大きく関わってくるだろう。

数多くスポーツ現場に立ってきたから伝えたいこと

“強い心と身体”をつくる食事は、とても重要です。特にスポーツにおいて、食事によってパフォーマンスや結果が大きく左右されることは、きっと読者の方もご存知でしょう。私は管理栄養士歴28年、スポーツ栄養に関わってから13年ほど経ちました。今回は私の見識とこれまで現場に立ってきたことを通じて、栄養学だけでは語りつくせない「スポーツと食」についてお伝えします。

アスリートやスポーツをする人にとって、きっと「食事」は意識が向きやすいところでしょう。食はエネルギー源でもあり、筋肉をつくる材料にもなります。そのため、パフォーマンスに直結することを皆さん知っているからかもしれません。しかし、昨今はさまざまな情報が出回り、一体何から取り組めばよいのかわかりづらくなっていることも確かでしょう。

まず、食を考えるうえで大切なことは食への“意識”です。特に小学生からのジュニア期で、食の意識の形成はすでに始まっています。もっと言えば、実のところ乳幼児期から始まっているのです。では、どのように食への意識を作ることができるのでしょうか。

食事内容が運動パフォーマンスに与える影響

スポーツと食について触れるうえで、まず小学生のジュニア期からお話をしたいと思います。さっそくですが、食を考える前に、まずは子どもたちがおかれているスポーツの環境を考えてみましょう。

幼稚園や保育園の頃から、スイミングやリトミック体操などの習いごとが始まります。さらに小学生になるとスポーツ少年団やクラブ活動、部活など競技を始める機会が増えるでしょう。ダンスや水泳、サッカー、野球など。スポーツにはさまざまな種類があり、その子の特性に合っている、興味が向いている競技を選んでいくことが多いはず。この頃はスポーツを通して、競技の楽しさを体感していく時期です。

ここで食について意識して欲しいのが、スポーツを通じて“消耗”する点。運動すれば身体や筋肉を使い、新陳代謝も活発になってエネルギー消費量も多くなります。そして消耗したエネルギーを補い、身体の機能を修復させるためにも、食事はとても重要になるのです。

もし運動量が増えているのに食事の内容・量が変わらないと、どうなるのでしょうか。まずは活動するためのエネルギー量が少なくなり、身体の機能を修復するための材料が不足します。すると、怪我が多くなったり、風邪を引きやすくなったり。あるいは物事を乗りこえる気力がなくなるなど、ネガティブな状態が出てくるでしょう。このような状態が見られたら、その子自身の素質の問題の前に、食事に改善点を見つけられる可能性があります。ですから、親御さんやジュニアスポーツに関わる方には、パフォーマンスと食との関わりに着眼点を持つべきなのです。

大切なのは“食の楽しさ”を知ること

小学生の子どもたちに身につけて欲しいのは、食べることの楽しさを知り、好き嫌いなく食べられるようになることです。親御さんにお子さんの好き嫌いについて話すと、「うちの子は好き嫌いが多くて……」と話す方がすくなくありません。しかしこの時期の好き嫌いは、実のところ親御さんが決めてしまっていることも多く見受けられます。

例えば、トマトが嫌いなお子さんがいるとしましょう。もしサラダのトマトは食べないのに、トマトソースのパスタなら食べられるのでしたら、この子は「トマト嫌い」ではありません。もしかしたら畑から自分でとった、新鮮なトマトなら食べられる可能性があります。このように他の食材でも、以下のように食べられる方法があるかもしれないのです。

  • 採れたてだったら食べられる
  • 調理方法を変えたら食べられる
  • 自分で料理をしてみたら食べられる など

あるいは子どもの時点で苦手でも、年齢を重ねるごとに食べられるようになることもあるでしょう。だからこそ「嫌い」と決めつけず、色んなものを食べてみる機会を作ってほしいと考えています。

スポーツに取り組んでいくと合宿があったり、遠征先や海外など不慣れな環境で試合や練習をしたりする機会があるかもしれません。そうした場合でも十分に食事をとり、勝負していかなければならないのです。ここで好き嫌いがあると、食べ物の選択肢がより狭くなり、ストレスやパフォーマンス低下に繋がりかねません。好き嫌いなく何でも食べること。置かれた環境を受け入れて最高のパフォーマンスを見せられる心と身体は、ジュニア期からの食事で養っていくことができるのです。

中学生は「食で心と身体が変わる」意識づくりを

成長著しい成長期の中学生になると、食の意識が芽生えていきます。この時期にこそ、食を通じて心と身体が変わっていく面白さを知って欲しいものです。小学生の“食は楽しい”からレベルアップし、自身の身体活動量(運動量)に対して“どんな食事”を“どのくらいの量”で食べれば良いのか、自分で考えられる力を養える時期でもあります。例えば「この試合で絶対に勝ちたい!」という目標があったら、それに合わせて練習計画を立て、それに見合った食事も考えていけるようになるでしょう。

我が家の長男は小学生からサッカーに取り組んできました。高校生では全国大会を目指し、今は大学でアメフト部に入って練習に励んでいます。小学生の頃、長男は食が細く、あまり食べることができませんでした。サッカー選手を目標に身体を強く大きくするため、小学4年生から食トレ(食のトレーニング)を開始。少しずつご飯の量を増やすよう取り組んで、身体を強く大きくしていきました。高校生の頃には全国大会出場という明確な目標に向け、自分自身で練習の合間に補食をとったり、練習後には回復食としておにぎりを食べたり。目標に向けた“食の取り組み”への意識を作ることができました。

では、なぜ食の意識を、中学生までに作っておくことが重要なのでしょうか?

それは、高校生になると競技レベルが一気に上がるため。レベルが高く厳しい練習環境にも、食を通じて競技に集中できる心と身体の土台を作っておくことで、競技でも伸び代に大きな違いが出てくるのです。

ジュニア期の食には、子ども自身より親御さんが大きく関わります。とは言え、プレッシャーに感じる必要はありません。私から親御さんに「こうしてほしい」と思うのは、「食は楽しい」ということをご家庭で伝えていってほしいということです。例えば忙しくてお家で料理を作れなかったり、精神的に余裕がなかったりするときもあるでしょう。そんなときは、簡単に作れるもので構いません。そのときにできる範囲で十分ですから、“食を楽しむ環境づくり”に取り組んでほしいと考えています。「この栄養さえとっていればいい」「食べていればいい」と作業のようになってしまうのではなく、「皆で食べるのは美味しい、楽しい」という意識。これが、子どもたちが食から心や身体との繋がりを学んでいく場になるのです。

これまで私は、多くのスポーツ現場に立ってきました。その経験から最近特に感じるのは、「食の基本さえ知っていれば完璧じゃなくてもいい」ということです。では、食の基本とは果たして何なのか。まずは、「食は楽しい」と感じることから始まるのではないでしょうか。

次回は、「食の土台をつくる身体の働き」についてお伝えします。

[プロフィール]

馬淵 恵(まぶち めぐみ)
FREC株式会社 代表取締役社長。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士、管理栄養士、健康食育シニアマスター。一般社団法人食アスリート協会理事・主任講師、株式会社フィジカルレストラン取締役 統括管理栄養士。

共立女子大学食物学科管理栄養士専攻を卒業後、大手食品メーカーで営業を担当。結婚出産を経て2013年「食を育てる」をコンセプトとしたFREC株式会社設立。大手エステや行政、病院、企業での生活習慣病、ダイエットなどで、延べ5万人を超える方々に食のアドバイスを提供。全国で幅広い年代に向け食と健康について発信している。

現在はスポーツ食育を中心にプロ野球選手や実業団の陸上チームや水泳クラブ、高校野球・ラグビー・サッカー、大学ラグビー・アメリカンフットボールなどで、栄養サポートを全国で展開している。企業健康講演・新人社員研修・行政学校での食育講演など年間50本以上の実績。妻として、働く1人の女性として、女性が自分らしい働き方を見つけられる仕組みづくりをミッションに様々な活動を行っている。二児の母。

・著書かんたんやさしい食べるを変える 米トレ(報知新聞社出版)。