どんなスポーツにも、シーズンというものが存在します。屋内スポーツだとその境目が曖昧なことはありますが、だいたい夏期スポーツと冬期スポーツで分けられるでしょう。トライアスロンは夏期スポーツに分類され、そのシーズンはだいたい3月〜11月。世界中のレースは、おおむねこの期間で開かれます。

私は、その年のレースが終わると、その日のうちに次のシーズンへ向けてのトレーニングプランを立てます。そのとき、ざっくりと下記の点について明らかにします。

  • シーズン初戦と最も力を注ぐレースを決める
  • 1年間を4つの期間に分ける
  • その年を振り返り、足りない部分・成長した部分を明らかにする
  • それぞれの時期に到達したいレベルを定める(主にタイム)

実際にスケジュールが走り出すと色々なことが起き、その都度で微調整は入りますし、ときには大きな修正が入ることも少なくありません。怪我によるトレーニング離脱や、レースキャンセルによるスケジュール変更等が主な要因です。しかし、ほぼ確実に修正が入るとしても、最初のうちにある程度の道筋を決めておくのは重要なことだと思っています。

目次

シーズン初戦と最も力を注ぐレースを決める

シーズンの全体像を把握するためにも、私は最初にシーズンの1番最初に挑戦するレースと、そのシーズンの中で1番力を注ぐレースを決めます。この「1番力を注ぐレース」というのは、調子の波を最高潮に持っていくレースのことです。

当然、出るレースすべてで全力を尽くしています。しかし、人間の体が調子の最高潮を迎えられるのは、1年のうちに1~2回程度だと言われています。そのため、「絶対にはずしたくないレース」もしくは「全力でチャレンジしたいレース」に調子の最高潮が持ってこられるよう、スケジューリングすることが必要です。

さて、初戦とメインレースが決まると、だいたい1年間の全体像が見えてきます。このタイミングで、スケジュールが発表されている他のレースも選んでいきます。時期や場所、移動しやすい国かどうか、治安はどうか、渡航費は…など。さまざまなことを考えてレースを組んでいくわけです。

1年間を4つの期間に分ける

初戦、メインレース、それ以外のレースが決まると、1年間の動きは概ね決定します。その中でトレーニングの期分けをするのですが、私は以下のように4つに分ける手法を用いています。

1.オフシーズン

前のシーズンで足りなかった部分と、次のシーズンで発揮したいパフォーマンスへ向けて強化すべき部分を明確にしてトレーニングを積みます。さらに、この時期はレースがないので、シーズン中はできないような疲労が残る強度の強いトレーニングを、積極的に積んでいくようにします。1年の内で、1番練習をしている時期に当たるかもしれません。

2.シーズン前期

シーズン初戦から、だいたい7~8月頃まで。トライアスロンは8月中に世界的にレースが開かれない中休みの時期(だいたいサマーバケーションの時期)が存在するので、その時期までがシーズン前期です。この期間はレースで各地を転戦しつつも、シーズン後半に調子が落ちないようトレーニングもなるべく継続していきます。

3.シーズン中期

主に後半戦へ向けて、もう一度トレーニングを積む時期です。8月には世界中でレースが一旦落ち着く時期があり、それを境として前期後期でシーズンが別れます。この中期のレースが一旦落ち着く時期は、前半シーズンでのレースを振り返り、必要な部分をもう一度鍛え直す練習の時期に当てています。

4.シーズン後期

大きなレースが入ってくることが多いので、とても重要な時期です。メインレースもこの時期に入ることがほとんどなので、シーズン中期で鍛え上げた体を、最後に向けて仕上げていくようトレーニングを組み立てていきます。

その年を振り返り、足りない部分・成長した部分を明らかにする

レースが決まり、スケジュールもだいたい見えてきて4つの期分けができたら、トレーニングの方向性を決めるためにその年を振り返ります。主に見るのは、以下の2点です。

  • シーズン開始時に立てていた目標は達成できたか
  • できている場合、できていない場合、その要因は何か

スケジュール、トレーニング、体調の変化や日々のモチベーションといった内容について、練習ノートなどを見返しながらリストアップしていきます。この段階で、翌シーズンに向けて鍛えていきたい部分、継続した方が良さそうなトレーニングなどが見えてきます。そのため、それがオフシーズンにやる内容なのか、レースに近づいたときに取り組むべきものなのかを見極めながら、少しずつ形にしていくのです。

それぞれの時期に到達したいレベルを定める(主にタイム)

最後に、それぞれの時期に到達しておきたいレベルを決めます。このレースでこれくらいの成績を残したいから、これくらいのレベルのパフォーマンスが欲しい…と言った感じです。

このときに注意するのが、到達したいレベルを決めるときは、必ず他人が絡まない要素で決定すること。他人が絡む要素、例えば順位などを設定してしまうと、そこまでのトレーニングの達成度を正確に評価することができなくなってしまいます。また、目指すレベルも他人によって変動してしまい、あまり良くありません。

良いのは、例えばタイムです。「このレースまでにランニング5,000mで15分切れるレベルに到達して、レースに臨みたい」といった感じに組み立てます。タイムは不変のものなので、目標設定やトレーニング評価が正確にできるようになるためです。その能力を持ってして、レースでの順位やタイムはどうだったのかを確認し、目標順位へ向けた設定は正しかったかどうかを評価。そして、また次に向けて強化していくのが基本的なサイクルになります。

以上の点を気にしながら、シーズン通しての大まかな流れを考えていくことになります。とは言いつつも冒頭に述べた通り、予定は常に変わるものです。また、怪我や病気、生活面での変化などで修正は絶対に必要になってくるので、そこまでキッチリと組まないようにするのも大事なことでしょう。もっとも大切なのは、今目の前にあるトレーニングが、一体どこを見据えてのものなのかを、ボンヤリでも構わないので理解すること。もし、これから数カ月先のレースなどに向けて準備を開始するのであれば、今回ご紹介した方法を試してみてください。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

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