最近はデバイスやアプリの発達で、わざわざ作業しなくてもトレーニングデータが勝手に記録されるようになりました。練習が終わった後、ノートやメモ帳などに手書きで記していた時代と比べると、格段に便利になっています。

そもそも、私はトライアスロンを始めてからの約18年間、トレーニングをほぼ全て大学ノートに手書きで記録してきています。始めた頃に便利な物が無かったというのもありますが、便利なアイテムを使うようになった今も、手書きでの記録は続けています。

しかし、書く内容は以前と比べてかなり変わりました。私自身が子供から大人へ成長したことによる影響も大きいですが、それ以上にアプリやデバイスの性能が向上し、これまで手書きで記録していたものがトレーニング終了後に自動でデータ記録してくれるようになったからです。

その代わり、手書きのノートにはデバイスで測定できないもの、数字では評価できないものを中心に記録していくようになりました。今回は、この時代にあえて手作業でトレーニングを記録する意味について、私なりの考えをお伝えします。

目次

記録内容の棲み分け

私が使用しているデバイスやアプリは、ボタン一つで練習内容を記録・分析してくれる優れものです。これが昨今のスポーツウォッチの常識だというのも、本当に凄いことだと思います。ですから、数字の記録はアプリに一任し、主要なものだけを手書きで記録するようにしました。

タイムや心拍数、総距離などはアプリが勝手に計算・記録しくれるので、ノートには細かく記入していません。後から見直す際も、アプリの方が探し出すのも簡単です。その代わり、デバイスやアプリで測定・評価ができない部分、感覚的なものについては手書きで記録しています。主に疲労感やモチベーション、体の痛みなどですね。

数字で評価できる内容の記録のみでも、もちろん十分だとは思います。心拍数が高ければ体調が良くない証拠ですし、タイムが悪ければ疲労が溜まっているか実力が到達していないかのどちらか。その他に、今やスポーツにおける大抵のことは、数字で測定・評価できるでしょう。

しかし、数字で測定できるものが多くなってきているのと同時に、まだまだ測定しきれない部分が多くあるのも事実です。モチベーションなどは、その最たる例かもしれません。その日の練習に対してやる気があるかどうかは、自己申告でしかわからない部分だと思います。

人間は鉄で出来ているわけではありません。ですから、各種データが良い傾向にあるからと言って、必ずしも最大パフォーマンスが発揮できるとは限らないでしょう。あるいは目標があるからと言って、常に100%のモチベーションで居られるわけではありません。もちろん、全くやる気がなくなる日はありませんが、100が90になったり80になったり、その日の練習結果に満足したのかどうかなど、気持ちの動きというものは意外と出るものです。

あるいは、数値上は全快でも疲労感があるのかなど、デバイスやアプリで色々なことが数値化できるようになったからこそ、「測定できない自分の感覚」というものを大事にするようにしています。そのため、デバイスやアプリが高性能になるに連れて、練習ノートには後者のような「自分にしか分からない感覚」の部分をより多く記録するようにしているのです。

ちなみに、私は大学ノートに記録するアナログ方式ですが、別にアプリなどのデータ上に手動で記録するのでも良いと思っています。大切なのは、何かあったときに見返せること。トレーニングデータのログアプリだと、最近はコメントを入力できるものが大半です。そこに記入してしまえば、記録媒体も一つで済んで楽ですし、ノートと違って嵩張りませんから。

日記的側面

自由に文字を入力できるということで、その日のコメントを残すなど日記的側面としても活用しています。トレーニングというものは練習のそのタイミングのみではなく、それ以外の日常生活から受ける影響も少なくありません。何か大きな変化があったとか、今日こんなことがあったなど。一言くらいで構わないので、日常の些細なことを書き留めておくと、例えば「好不調の波があったけれど原因がわからない」なんてときに役に立つかもしれません。

以前、練習はよく積めていて心拍数などのデータも良く、極度の疲労を感じる練習もしていないような時期に、突然練習で走れなくなった時期がありました。数値上は全くの健康体でしたし、特に体の痛みなし。理由がわからず困惑していたのですが、ここで練習ノートを良く見直してみたのです。すると、不調の直前である数日間のコメントに、「締め切りの迫っている書類がある」と書いてありました。

その日以降の睡眠データを見てみると、若干ですが普段より浅い眠りが続いているようでした。恐らく、そういった日常のストレスが積もり積もって、不調として現れたようです。しかし、数値で顕著に表れていたわけではなかったので、コメントが無ければおそらく見落としていました。

このように、特に精神的なストレスなどは、いくらデータをとっていてもわからないことが多いもの。そういったものを把握するためにも、日記的にその日のコメントをつけていくのは、利用方法として悪くないのかもしれません。

継続するコツ

トレーニングノートを続けるための方法は、習慣化させることに尽きると思います。寝る前に歯を磨くのと同様に「ノートを記録するタイミング」を決めてしまえば、忘れることはなくなるでしょう。

私の場合、就寝前にストレッチするのですが、その前に記入することにしています。「歯を磨く→ノートを書く→ストレッチ→寝る」というのが就寝前のルーティンです。私の場合は子供の頃からなので、コーチや母に言われて書いているうちに習慣化しました。ですから、誰かに言ってもらったりアプリで通知が出るようにしたり、何かしらの方法で「自分以外の人が教えてくれる状況」を作れば、忘れなくなって習慣化できるかもしれません。

あと挙げるのであれば、最初に書き過ぎないことでしょうか。毎日書くことになるので、メモ程度で簡単に書ける範囲に内容を決めて、書くのが億劫にならないように工夫します。

冒頭でも述べたように、昨今はトレーニングデバイスやアプリの発達により、わざわざ記録のために手を動かす必要がなくなってきました。トレーニングした本人が記録するよりも正確で高性能な分析が、それらによってほぼ自動で行われるようになったからです。

しかし一方、まだまだデバイスやアプリでは測りきれない分野も多く存在します。もしトレーニングの記録をつけていくなら、そういった測定できない部分について、自分の感覚を言語化することで記録していくのが良いかもしれません。

トレーニングは結局のところ、その人の体に合うか合わないかが重要です。行ったトレーニングに対し五感をフル活用して記録をためることで、自分にあった最適解を導き出すための強力なデータになっていくと思います。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

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