プロであっても趣味であっても、スポーツをする以上は練習が欠かせません。持久力や筋力の向上、技術の習得…それらを目的とした運動を繰り返すことが、いわゆる練習・トレーニングになります。

trainやpracticeには、「引きずる・連なる」」「反復する」という意味があるそうです。練習の「練る」という言葉もたくさんの意味を持ちますが、そのほとんどが「何回も繰り返し行う事で洗練されていく(する)行為」を指しています。つまり、練習というものは1回きりで終わらせては意味がなく、何回も繰り返し行う必要があるのです。

しかし、人間のやる気や意欲というのは続くものではありません。長く続ければ続けるほど、「気が向かない時の対処」というのが大事になってきます。私もトライアスロンを始めて18年、練習に気が向かない日はあります。そんなとき、私は以下の点を意識するようにしています。

  • その日予定している練習の意味を再確認する
  • 目標を達成できた自分を想像する
  • ストレッチやマッサージなどの軽い運動をする
  • とりあえず練習場所に行く
  • ウォーミングアップだけでも始める

イメージとしては、「あ、今日気が向かないな…」となったら最初に一番上の方法を試してみて、だめなら次、だめなら次…と、だんだん下の方法に下がってく感じです。ざっと見ていただくとわかると思いますが、下に行くほど割と強引な方法になっていきます。これらの方法について、一つずつご説明します。

目次

その日予定している練習の意味を再確認する

まずはフェーズ1。「あ、今日気が向かないな…。」となったとき、1番最初に試す方法です。

練習には、必ず目的があります。例えば持久力を鍛えたい、動きを確認したいなど、必ず「その練習で身につけて欲しい事柄」というものが存在します。ご自分で練習計画を立てられている方なら、お分かりになることでしょう。試合から逆算して「今の時期はここを鍛えたい」「この部分が特別弱いのでそこに狙って刺激を与えたい」という風に、パズルのピースを当てはめるようにして練習が立てられています。

それを再確認し、「じゃあ今日の練習はどんな意味があってどんな目的で、目標に向けてどれくらい重要なのだろうか」ということを再認識し、練習する必要性を頭に理解させる。頭で必要性を理解すれば、練習をする気にもなるはず…という感じで、自分自身の「理性」に訴えかけようという方法です。

目標を達成できた自分を想像する

上記の方法で気が向かなかったら、フェーズ2です。

ここまではまだ大丈夫。むしろ、練習に対するやる気があるときでも、練習前にはここまでは頭の中で整理してスタートするくらい普通にやることなので、ここまで降りてきても気にする必要はありません。

1つ前で練習の意味を理解していれば、それを行った先で自分が目標達成している姿は容易に想像できるはずです。その日の練習は、もしかしたら辛いのかもしれないし苦しいのかもしれない。だから、気が向かないのかもしれない。しかし、それを乗り越えた先で自分が望むものを手に入れられると思えば、今苦しむ理由にはなるのではないでしょうか。こうした感じで、自分の「感情」に訴えかける方法です。

この部分は人に協力してもらって、目標達成の姿の解像度を高めていくのもありかもしれません。私はあまり人に介入されると「鬱陶しい」と思ってしまうタイプなので、あまりやってもらったことはありませんが…。そこは、ご自身に合った方法を見つけてみてください。

ストレッチやマッサージなどの軽い運動をする

ここまでやっても気が向かない場合は、フェーズ3です。

ここまで来たら、思考や感情に訴えかけても仕方ありません。体の方にアプローチをかけます。人間の思考や感情と体の状態というのはある程度リンクしているので、体の状態が上向きになれば、練習へ行く気が向くはず…という作戦です。

私は普段も練習前には、ストレッチや軽い補強トレーニングを入れて体を温めます。しかし、気が向かない状態でこのフェーズまで来た場合は、特に時間を掛けてストレッチやマッサージ、補強トレーニングをするようにしています。じっくり時間をかけることで、段々と気分が練習に向いてきて、やがてスタートする気分になるかも…という魂胆です。動画を観ながらでも、音楽を聴きながらでも構わないので、とにかく徐々に体を動かしていく。そうすれば、やがて練習に気が向いてくるかもしれません。

とりあえず練習場所に行く

ストレッチやマッサージなどをして体を起こすようにしても気が向かない場合は、フェーズ4。とりあえず練習場所まで行きます。

「練習に気が向かない。けど、練習しなければ。」という状態でサボってしまうのは、後から後悔を生むことになり、気持ち的にもあまり好ましくありません。とりあえず練習場所まで行けば、動き出そうという気持ちくらいにはなるはず。これに賭けて、まずは練習場所まで行きましょう。行ってみれば機材が置いてあるかもしれませんし、仲間がいるかもしれません。そうすれば、無理矢理にでもスタートする気になれるはずです。

ウォーミングアップだけでも始める

練習場所に行っても駄目だった…!という場合は最後の手段、フェーズ5です。そのまま、練習をスタートさせてください。まずはウォーミングアップだけで結構ですので、走り出しましょう。

練習場所にまで行った時点で、「練習に気が向かない」と頭では思っていながらも、「練習をする意志」は持っているということになります。つまりは、上手くスイッチが入ってないだけ。ですから、強制的に練習をスタートさせることで、スイッチを切り替えさせてやろうという作戦です。

ここまで来ると、正直もう辞めることのほうが難しくなるでしょう。ウォーミングアップを始められた時点で、「練習をする」という目的が8割ほど達成されたことになります。最後まで「練習をする意志」を捨てなかったあなたの勝ち。おめでとうございます!

そして、練習するつもりにはなったけど、まだいまいち気持ちが入らないという場合は、「本当はこれくらいの量だけど、気が向かないから少し減らそう」という具合でも構いません。とにかく、大切なのは毎日続けることです。本当は予定通り続けるのが一番ですが、たまにはラクしたって問題ない。続けることさえやめなければ、必ず今日気が乗らない中でも、頑張って練習スタートしたことは必ず力になるはずです。

そして、最後までやったけど練習を始められなかった、あるいは最後のフェーズまで行けなかったという方。安心してください、大丈夫です。それは恐らく、心か体が休息を欲しているのでしょう。無理な状態で練習するのは怪我のもと。できなかったからと言って、悲観する必要はありません。スポーツに取り組んでいると、「辞める勇気」を試される場面がたくさん出てきます。辞める練習のときだと考え、割り切って休んでしまってください。

練習というのは、日々繰り返し行うことでしか効果を得られないものです。今回ご紹介した私の方法のように、ある程度自分の中で練習までの導線を引いてあげると、どんな気分のときでも安定して練習に向かうことができるようになります。その結果、目標へ到達する速度を早くすることができるかもしれません。練習に気が向かないときは、ぜひ参考に試してみてください。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

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