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なぜカナダの選手に“圧倒的不利な”左投げ右打ちが多いのか メジャーには名選手も

◆カナダに多い「左投げ右打ち」

野球選手の話をしていて「左投げ右打ち」と聞いたら、正しくは「右投げ左打ち」なのに自分が聞き間違えたのか、もしくは相手が言い間違えたと思う人は多いだろう。それくらい、「左投げ右打ち」は珍しい。

 

まず、左利きは右利きよりも圧倒的に少ない。日本では人口の1割ほどと言われている。そして、野球では左投げは守備位置が限られることなどから、子どものときに右利きに変更させるケースが多い。

 

投手は左投げが重宝されるが、他に左投げで影響が出ないのは一塁と外野。捕手は三塁への盗塁を阻止する際、体を一度開いてから送球するため、盗塁阻止率が下がる。二塁手、三塁手、遊撃手も一塁への送球で、右投げよりも時間のロスが生まれる。そのわずかな時間が、プロの世界では致命傷になる。

 

こうした考え方は野球人口が多い国では一般的にもかかわらず、「左投げ右打ち」の選手が多い出身国がある。多くのメジャーリーガーを輩出しているカナダだ。昨シーズンまでオリックスに所属し、3年間で15勝を記録したアンドリュー・アルバースは、カナダ出身の左投げ右打ちの投手。メジャーでは4年間で26試合に登板して7勝を挙げている。日本でもメジャーでもプレーしたのはDH制のあるリーグのみ。打席に立つのは交流戦の時だけだったが、オリックスでは3打数0安打、2犠打。マリナーズで3打数1安打1打点だった。

 

アルバースも出場した2017年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のカナダ代表は、「左投げ右打ち」の比率が驚くほど高かった。登録された選手は全部で28人。そのうち5人いた左投げのうち、右打ちがアルバースを含めて3人と半分を占めた。

 

◆国民的スポーツ「アイスホッケー」の影響か

なぜカナダ出身の左投げ選手は、自然な左打ちではなく、右打ちが多いのか。その理由は、カナダの人気スポーツ「アイスホッケー」にある。カナダ人は子どものころ当たり前のように始めるが、アイスホッケーのスティックは利き手でグリップを持って、反対の手を添える。これは野球のバットとは持ち方が逆となり、野球のようにスイングすると「右利きは左打ち」、「左利きは右打ち」の形になる。結果的に、アイスホッケーを経験した人にとっては、「右投げ左打ち」、「左投げ右打ち」が自然なのだ。

 

カナダ出身の選手は他の国と比べて「左投げ右打ち」が多いが、WBC代表もメジャーリーガーも投手ばかり。日本人やアメリカ人にも「左投げ右打ち」はいるが、野手はごくわずかだ。大成することは難しいのだろうか。

 

日本球界には、2004年のドラフト4巡目でロッテに指名された竹原直隆がいた。2016年までオリックスや西武でもプレーし、プロ通算441試合で打率.212、27本塁打、124打点だった。

 

◆メジャーには「左投げ右打ち」のレジェンド

一方、メジャーでは「史上最高の1番打者」と評されるレジェンドが「左投げ右打ち」だった。リッキー・ヘンダーソン。2003年までアスレチックスなどでプレーし、盗塁王のタイトルを12回獲得。通算盗塁数1406はメジャー史上唯一1000を超え、この先も破られることはない記録と言われている。

 

他には、広島でもプレーしたエリック・ラドウィックを兄に持ち、カージナルスなどに所属したライアン・ラドウィックも、野手として数少ない成功例だろう。メジャー12年間で、923安打を放ち打率。260。2008年には37本塁打、113打点を記録し、オールスターにも出場している。

 

投手では歴代22位の303勝をマークし、サイ・ヤング賞5回を手にしたランディ・ジョンソンも「左投げ右打ち」。投手としては数々のタイトルを手にした左腕の打撃成績は、通算625打数78安打、打率.125、1本塁打、40打点だった。

 

圧倒的に不利と言われる「左投げ右打ち」。その常識を覆すリッキー・ヘンダーソンのような伝説の名選手が、“王国”カナダからも生まれる日は来るのだろうか。