強くなっていく人とそうでない人は、何が違うのか。私の経験則としては、大まかに以下3つの特徴を持った選手が上手になっていくように感じます。

  • 素直で柔軟であること
  • 自分のパデルを客観的に見れること
  • 自責でものを考えられること

今回は、素直で柔軟であることについて。これは、当たり前のことのように思われるかもしれません。しかし、実際は意外とそうでない選手が少なくありません。指導している際、ときどき「この選手は何のために指導を受けているのだろうか」と考えてしまうことがあります。パデルを始めたばかりで右も左も分からないのならまだしも、ある程度のパデル歴があり、試合にも出るレベルになっている選手であれば、本来なら、例えば次のような思いを持って指導を受けるのではないでしょうか。

「もっと強くなりたいし、もっと良いパデルが出来るようになりたい。でも、自分一人で現状を打破するには限界だ。」

自分一人では(強くなるという)目的を達成できないと感じるから、ヒントやアドバイスを提供してくれたり、手伝ってくれたりしそうな指導者に指導を仰ぐわけです(パデルをプレイする目的はそれ以外にもある…という意見は一旦置いておきます)。

他の指導者はどうか分かりませんが、私は選手を見る場合、できるだけ色んな視点からその選手のパデルを見るよう心がけています。そうすると、その選手が修正したほうがいいと思う部分、もしくは習得する必要があると思う点がいくつか出てきます。その中でも、特に「ここが良くなれば色々なところに派生して、この選手のプレイが良くなるのでは」と感じた大きなキーワードをまず伝えるのです。もちろん、時間があったりテニスを始めて間もなかったりする等のケースでは、細かいところからコツコツ作り上げていく場合もあります。

しかし、こういったアドバイスを伝えても、一言目に「でも」「だって」「けど」という言葉が出たり、自分の中で良しとしている考えを押し通したり。あるいは、聞く耳すら持とうとしない選手も意外といます。もちろん、私のアドバイスより、その選手の考えの方が的を得ている場合もあるでしょう(それならば自分で強くなっているはずですが)。私がその選手と良い関係を築けていないから、選手が聞く耳を持ってくれないということもあると思います。しかし、やはり「強くなりたいのに強くない」といった理想と現実のギャップがあるのに、現時点で上手くいっていない方法を選択し続けるというのが、個人的には理解できません。

指導を受ける際に求められる前提とは

強くなりたいけど、今のやり方は変えたくない。今のやり方が上手くいっているかと言えば、そうでもない。強くなりたいと思っているからこそ自らの意思で指導を仰ぎに行っているのに、その指導者の言うことより自分が「いい」と思っている方を優先する。正直なところ、こういう選手は何をしに来ているのか、何をしてあげれば良いのかよく分からなくなります。

逆に、強くなっていく選手は、この辺がとても柔軟です。というより、強くならない選手は、指導を仰ぐそもそもの前提が間違っている場合が多いように感じます。

  1. 今のままではさらに強くなれない
  2. 何か新たな方法を取り入れる必要性を感じる
  3. その方法を知るためのアンテナの感受性を高め、とりあえず色々な情報を取り込んでみる
  4. その中から取捨選択し、自分のものになるまで練習する

強くなる人はこういった順番なのに対し、そうでない選手は二番目のところで躓きます。新たな何かが必要だとは感じているものの、自分が「いい」と思っていることの方が勝ってしまう。もがいているのが見えるだけに、なんとかしてあげたい気持ちはあります。しかし、選手自身がこれに気づかないと、どちらも空回りです。

とはいえ、「じゃあ、コーチの言う通りやればいいんでしょ?」といった投げやりな状態では上手くいきません。これは、冒頭で述べた特徴のうち「自責でものを考えられること」と関連してきますが、続きは次回以降に詳しくお伝えします。

By 庄山 大輔 (しょうやま だいすけ)

2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。

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