筋トレのほとんどはセットで行われる。例えば、腕立て伏せなら30回3セット、バーベルスクワットなら5回5セットのような数字をあらかじめ決め、それぞれの動作に取り組むことが普通だ。一般的に、重い重量を扱う動作はセット内の回数を少なくし(高重量低回数)、軽い重量や自重での動作をする場合は回数を増やす(低重量高回数)。しかし、セット間の休息はどれだけ取るとよいのだろうか。その答えにはいくつかの要因が絡み、筋トレを行う目的もそのひとつだ。

目次

筋トレの目的によって休息の長さを変える

下の表は、筆者が米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)の資格を受験した際の教科書に書かれていた内容だ。現在でも、ほぼ共通の目安として通用するだろう。

筋トレの目的

セット内動作回数

セット数

セット間休息の長さ

最大筋力

6回未満

2~6セット

2~5分

パワー

6回未満

3~5セット

2~5分

筋肥大

6~12回

3~6セット

30秒~90秒

筋持久力

12回以上

2~3セット

30秒未満

スクワットという下半身の筋トレ動作を例にとると、次のようになる。パワーリフターは重いプレートを何枚も付けたバーベルを数回挙げると、次のセットに移るまでに回復を図るために5分間待つ。長距離ランナーは自重のジャンピングスクワットを30回行い、まだ息も荒いうちから次のセットに挑む。

筋肥大に適切な休息の長さ

高重量低回数で長い休息、あるいは低重量高回数で短い休息という組み合わせは、その目的からして比較的分かりやすい。しかし、その中間にある筋肥大目的の場合は、やや判断が難しくなる。動作回数やセット数はストイックにメニュー守っても、休息の長さには無頓着になる人は多く、大抵は短くなる。疲れた状態でトレーニングすることで、効果が上がるような錯覚に陥るからかもしれない。

筋肉を成長させるために、従来は30~90秒の休息時間が適当だと考えられていた。しかし、それよりさらに長くする方が効果的であるとする研究(*1)がある。

*1. Longer Interset Rest Periods Enhance Muscle Strength and Hypertrophy in Resistance-Trained Men.

2016年に全米ストレングス・コンディショニング協会ジャーナル上で発表されたこの研究では、筋トレ経験が豊富な成人男子21人を2グループに分けた。1つのグループはセット間休息を1分間とし、別のグループは3分間とした。それ以外は、まったく同じ内容の筋トレメニューを8週間にわたって実施。8~12回を3セットという、筋肥大に適したメニューである。

8週間後に両グループの最大筋力と筋肉量を測定すると、3分間休息グループの方が顕著に高い増加率を示したということだ。論文著者たちは、3分間休息グループは、より重い重量を扱うことができたからではないかと推測している。両グループのセット数が同じであれば、当然ながら重い重量を挙げる方の効果がより大きくなる。

筋トレで休息を取ることの現実的な困難

しかし、現実の世界では単純に休息時間を長く設定することで、すべてが解決するというわけにはいかない。なぜなら、トータルにかかる時間が長くなってしまうからだ。ところが多くの人は、限られた時間で筋トレを行っている。仮にそれを1日1時間だとして、そのなかでセット間休息を長くすれば、行えるセット数そのものが減ってしまうのだ。

必要なセットを終わらせるだけの時間をなんとか確保したとしても、ジムでスクワットラックやバーベルの前で3分間じっと休むのは意外に難しい。退屈でもあるし、どうしても器具の順番を待つ人の視線が気になってしまうからだ。

自宅に筋トレ器具を揃えたりパーソナルジムを利用したりすることは、そうした時間的あるいは空間的な制約を少なくするメリットがあるのだろう。しかし、誰もがそれを可能にするための金銭的な余裕があるわけではない。それならば、どうすればよいのだろうか。なるべく空いたジムを探すか、あるいは空いた時間帯にジムに行くくらいが、現実的な手段なのかもしれない。

By 角谷 剛 (かくたに ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。

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