子どもの肥満が世界中で社会問題になっている。2017年に英医学誌「ランセット」に発表された研究(*1)によると、幼児から10代までの未成年者で肥満とされる人の数は世界で1億2,400万人に上り、過去40年間で10倍になった。英国では、未成年者の10人に1人が肥満だった。

*1. Worldwide trends in body-mass index, underweight, overweight, and obesity from 1975 to 2016: a pooled analysis of 2416 population-based measurement studies in 128·9 million children, adolescents, and adults

また、米国では疾病予防管理センター(CDC)が、2017~2020年における未成年者の肥満率について19.7%だと報告している(*2)。

*2. Prevalence of Childhood Obesity in the United States

これらの数字は、新型コロナウイルスのパンデミックより以前のデータを解析したものだ。そのため、現在はさらに大きくなっている可能性が高いだろう。日本の現状は欧米ほど深刻ではないかもしれないが、それでも無視してよい問題とは思えない。

目次

運動は一日中スクリーンを眺めている子どもの肥満リスクを減らさない

肥満の原因は食習慣とともに、身体活動の不足が大きな比重を占めることは容易に想像がつく。一日中外を走り回っているタイプの子どもが、肥満になるとは考えにくいからである。しかし、親はただ子供に運動をさせておけば安心というわけでもなさそうだ。2023年1月に発表された研究(*3)は、スクリーン(コンピューター、テレビ、スマホ、ゲームなどを含む)に向かっている時間が1日8時間以上になると、他の時間を活動的に過ごしている10代前半でも、肥満リスクは減らないと警告している。

*3. Screen Time from Adolescence to Adulthood and Cardiometabolic Disease: a Prospective Cohort Study

カリフォルニア州立大学サンフランシスコの医学博士ジェイソン・ナガタ氏が主導したこの研究では、10歳から14歳までの5,797人を調査した。スクリーンの前で過ごす時間を尋ね、Fitbitで日々の歩数を記録。肥満であるかどうかの指標にはBMIが用いられた。

ナガタ氏はメディア・リリースで、「余暇の大部分をスクリーンの前で過ごすより、その多くの時間を他の大切な活動に取り換えることができます」と述べている。

(参照:EurekAlert!|High physical activity does not offset obesity risk among preteens with high screen time より)

共同研究者のカイル・ガンソン氏(カナダ・トロント大学)は親の大切な役割として、子どもが遊びやスポーツ、あるいは屋外で過ごす時間を増やすように心がけるべきだとしている。子どもたちをスクリーンから引き離し、運動する時間を増やさせる。言うのは容易だが、現代において実行は極めて困難だろう。子どもたちが遊び回れる公園や野原はどんどん少なくなり、その一方でオンライン・ゲームやSNSの楽しみは増え続けているからだ。

親にできることは何か

それでも、私たちは真剣にこの問題に取り組まざるを得ない。肥満の子どもは肥満な大人になりやすく、それは将来的に深刻な健康問題のリスクに繋がるからだ。ナガタ氏が主導した別の研究(*4)によると、思春期にスクリーンを見て過ごした時間数は約24年後の肥満、糖尿病の発症、腹囲の増大と密接な関連性があることが明らかになった。 これは20 年以上の期間に渡って、7,105 人のデータを追跡調査したものだ。

*4. Screen Time from Adolescence to Adulthood and Cardiometabolic Disease: a Prospective Cohort Study

「親は子どもたちがスクリーンの前で過ごす時間を減らすように言い聞かせるべきです。寝る前や食事の時間に、スクリーンから離れる時間を設定することもできるでしょう。それだけでなく、親は子どもたちのロールモデルになって自分たちがスクリーンの前で過ごす時間を減らし、運動を行う姿を見せることもできます。」

ナガタ氏はこうも述べているが、後半は耳が痛いと感じる親は筆者だけではないだろう。子どものことを考えるのであれば、まず自らが習慣を変える努力が必要なのかもしれない。

By 角谷 剛 (かくたに ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。