トライアスロンは、「水泳→自転車→ランニング」を一人で一度に行うスポーツです。水泳は短くても750m~1,500mといった長距離を、湖や海などプールのように泳ぐために整備されたわけではない場所を泳ぎます。そのため、競技中のほぼすべてを、4泳法の中で一番ラクに速く泳げるクロールで泳ぐことになります。

しかし、実際の練習場面では、クロール以外の泳法を取り入れる選手・指導者が少なくありません。今回は、実際にレース場面で使うわけではない泳法を練習に取り入れることについて解説します。

目次

単純に「競泳」のレベルを上げるため

私自身は、クロール以外の泳法を練習に取り入れることは「必要」だと考える側の選手です。これは、小中学校でトライアスロンと並行して競泳を行っていたことも関係するのかもしれません。クロールをある程度以上のレベルに引き上げるためには、クロール以外の動きもできる必要があると考えています。

水を掴む感覚、どんな体勢からでも体を前へ進める方法、体のしならせ方・ストリームラインの作り方等など。クロール以外の泳法から、クロール上達に必要な技術を学ぶことは多いのです。スイマーとしての能力の幅を広げて「競泳」が上達しないことには、トライアスロンのスイムも速くならないと考えています。

技術練習の一環として

「ドリル練習」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?競技にかかわる動作を一つ一つ分割し、それぞれを強調した動きを行うことで、理想の運動フォーム獲得を目的とした練習のことです。通常、クロールであればクロールの動きを細分化してドリル練習とするのですが、トライアスロンの場合は少々訳が違ってきます。

トライアスロンでは海や湖といった自然に中を泳いだり、他選手との接触があったりします。泳いでいるとときには波で体が沈んだり、接触で体がよじれた状態で泳ぐ必要が生まれたりします。そういった際に、どんな大勢でも「水を掴んで、体の下へ押し出して、前に進む」という一連の動作ができるようになるために、クロール以外の泳法を練習に取り入れることが多いのです。

特に波や流れに向かって泳ぐ際は、通常よりも体に負荷がかかります(「水が重くなる」と表現することも)。その際に、重さに負けず泳ぎ抜くための練習として、バタフライや平泳ぎなど瞬間で一気に力を開放するタイプの泳法を取り入れることが少なくありません。

個人メドレーの練習は心肺機能に高い負荷をかけられる

こちらは技術的側面というより、持久力や心肺機能といった側面からのアプローチの話です。実のところ水泳は、常に横に寝た姿勢で運動が続くため、心拍数が上がりにくい競技になります。

しかし、トライアスロンは水泳終了後に、バイク→ランと立位の姿勢での種目が待ち構えています。水泳を終えて急に立ち上がり、次の種目へ移ろうとすると一気に心拍数が上がり、かなり息が上がるもの。これは、体勢が寝た姿勢から立位に急に変わったことにより、脚の血液を重力に逆らって心臓に戻す必要が生まれ、心拍数が急激に上がるためです。

これと似た状況を作るために、個人メドレーを練習に組み込むことがあります。4泳法ができると絶えず姿勢が変わる(心臓の位置が変わる)ため、心拍数が落ち着くことを防ぎ、ある程度の負荷を効率的に心肺に与え続けることが可能です。特に水泳は、水中という重力や衝撃の少ない環境の中で行われるため、高い負荷を体に与えても怪我のリスクが低いのも特徴。「怪我のリスクを抑えつつ、心肺には高い負荷を与えたい」という際に個人メドレーの練習を取り入れられれば、水泳だけでなくバイクやランにもつながる練習ができるという考え方です。

練習の割合はクロール9割、他泳法1割くらい

ここまで、クロール以外の泳法を練習に取り入れる必要性や、その理由についてご説明しました。とはいえ、結局のところ本番で使う泳法はクロールです。そのため、強くなるために必要だからとクロール以外の泳法を積極的に取り入れた結果、クロールの練習が疎かになるなんてことがあれば本末転倒。いくら心肺機能や筋力、持久力といった能力が高くなっても、クロールで前に進む技術がなければトライアスロンでは何の役にも立ちません。そのため、最初にご紹介した通り、私は「競泳」が上達する必要があると考えています。

  • 水をキャッチするときに肘が落ちていないか
  • 肩甲骨や背中の大きな筋肉を使って水をかけているか
  • 呼吸のときに体の線はブレていないか
  • 脚が落ち、頭が上がっているような水の抵抗を受けるフォームになっていないか
  • ペース配分は適切か
  • ストリームラインはしっかり組めているのか など

競泳は体力と同じくらい、技術によって速度が大きく左右する競技です。今回ご紹介したことのほとんどは、いわゆる「応用編」の部分になります。まずは基礎となる部分をしっかり修めたうえで、トライアスロン用の練習として取り入れていくことをおすすめします。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

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