新年度も始まってから期間が過ぎ、そろそろ新しい環境に慣れてきた方も多いのではないでしょうか。私自身も、この4月から練習環境を一部変えて、さらなる競技力アップへ向けて舵を切ったところです。トレーニング5原則の一つ「漸進性の原則」にもあるように、トレーニングが進むにつれて、それに見合った負荷や難易度のトレーニングを取り入れていく必要があります。そのため、それに則った形になりますね。

進捗のほどは…といっても、ようやく1ヶ月経った程度。この環境変化が有用かどうかを判断するには、時期尚早といったところです。例えば今日ご飯の量を減らしたからといって、明日に体重が減っているわけではありません。同じように、何事も変化の結果を見届けるためには、ある程度の期間その状態を継続させる必要があると思います。今回は私がトレーニングする際、レベルアップを目指して変化を取り入れたときに注意している点についてご紹介します。

目次

3ヶ月は継続する

トレーニングにおいて一般的に言われているのが、「トレーニング効果が現れるのは約3ヶ月後」ということです。私は、その間にパフォーマンスが上がろうが下がろうが、トレーニングを継続させるか否かの判断材料にはしません。変化による結果を正確に見届けるために、最低でも3ヶ月間はトレーニングを継続させるようにしています。

なぜ、3ヶ月と言われているか。その根拠は色々とありますが、私が1番参考としている理由の一つが、筋肉の新陳代謝の周期が約2〜3ヶ月と言われていること。トレーニングによるパフォーマンス向上の大部分を占めるのが、筋肉の成長によるものです。その筋肉が身につくのに2〜3ヶ月かかるなら、トレーニングによる効果が出るのも同等の時間がかかるであろうという理由です。

すぐに結果が出るわけではないと理解する

前項とも似ているのですが、一朝一夕で効果が出るわけではないことをしっかり理解するようにしています。変化を求めるときは大抵の場合、直近のレースで何か上手くいかないことがあったり、練習が思うように進まなかったりなどの問題が発生しているもの。そのため、まずは本当に今変化が必要なのかを、一度落ち着いて考えます。

変化は未知へ進むという魅力を含んでいますが、同時にそれまで積み上げたものを一度崩してしまう危険性もはらんでいます。大きな成長を目指すには、変化が必要不可欠です。しかし、継続しなければ実力が身につくことはありません。今、本当に変化が必要なのかどうか。これは、かなり慎重に判断します。

そして、変化が必要だと判断した場合は、ある一定期間はパフォーマンスが下がってしまってもやりきるという覚悟を持ちます。それぞれの人に与えられた時間は限られていますが、成長のためには期間が必要なのもまた事実。特に体のこととなれば、急すぎる変化を求めた先にあるのは「故障・怪我」のみです。焦る気持ちをぐっと抑えて、淡々とトレーニングをこなしながら、新たなトレーニングに対して体が変化していくのを待ちます。

予め切り上げるタイミングや条件を決めておく

そして、ここが一番大事なポイントになります。それは、「切り上げるタイミング」についてです。どれだけ周到に準備しても、トレーニングが期待通りの効果につながらないことは十分にあり得ます。むしろ、そちらの可能性のほうが高いでしょう。その場合、何を切り上げることの判断基準とするかが重要になってきます。

私の場合は、主に練習でのタイムを参考にしています。「この期間までにこれだけの記録が出なかったら方法を変える」というように条件を設けることで、無意味に期間を引き伸ばすことを防げるでしょう。また、そのトレーニングによってどんな能力を伸ばしたいと考えているか、明確化させることもできます。

これは私の実体験ですが、望む効果が得られなかったとき「もう少し続けたら良いかもしれない」「今、たまたま調子が出なかっただけかもしれない」と、結果が出ないままズルズルその練習を不必要に継続してしまったことがあります。その結果、次の段階として考えていたトレーニングに移行するタイミングが遅れ、不完全なままレースに臨むこととなってしまい、大失敗を犯してしまいました。特に選手として1番足りなくなるリソースは「時間」と言われるほど、スポーツ選手にとって時間は貴重なものなの。ですから、この失敗はかなりの痛手となりました。

もちろん、数字として現れる結果が、トレーニング効果のすべてではありません。しかし、こういった負の連鎖を引き起こさないためにも、切り上げの基準を設けることは大切だと思います。

トレーニングの基本は「変化」と「継続」の繰り返しです。変化を与えることによって、体は新たな刺激や負荷に対して対応できるように成長しようとします。そして、継続してその刺激や負荷がかかり続けることによって、それらに対してもっとも効率の良い形での対応ができるように成長していきます。さらに、また新たな刺激が加わることで、その刺激に対して体が対応できるように成長していく。そうして螺旋階段を登っていくように能力を積み上げていくことが、トレーニングによる成長の基本です。

新しいことばかりに飛びついていてはいけませんがですが、古いことばかりに縛られていてもダメなのがトレーニング。時間という貴重なリソースを効率よく使っていくためにも、今回ご紹介した3点には、特に注意してトレーニングを組み上げるようにしています。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

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