レースや重要な練習の前などは、どうしても緊張してしまいます。これはスポーツに限ったことではなく、日常生活や仕事、勉強などでも同じ事が言えるのではないでしょうか。その後の人生に大きく関わってくるであろう局面になるほど、緊張感というのは増すものです。そんな緊張感ですが、私は以下4つについて自分なりの落としどころ(自分なりの理解)を見つけることが、緊張感との上手な向き合い方の鍵だと思っています。

  • 緊張する事は決して悪いことではない
  • 「そもそも、なぜ緊張しているのか?」を考える
  • 緊張を無理に抑えこもうとしない
  • 緊張と上手く向き合えばパフォーマンスは何倍にも跳ね上がる

正直、私自身も緊張に対して、自身を持って「これ!」と言える対処方法を持っているわけではありません。しかし、子どもの頃からレースのたびに、心臓が口から出てきそうなほど緊張してきました。その経験から、この4つを理解しておけば、いくらかポジティブに構えられるのではないかと思っています。今回は、この4つについて、それぞれご説明します。

目次

緊張する事は決して悪いことではない

緊張すると、体が強張って呼吸が浅くなり、脈拍が早くなり、人によってはパニックに近い状態に陥ります。この状態では、普段ならできるようなことも上手くできなくなり、焦りや恐怖を感じて動けなくなることもあるでしょう。これは、緊張が良くないことだと言われる原因ですね。ですが、これらが本当に良くないことかどうかも、捉え方次第だと思います。

体が強張って呼吸が浅くなり、脈拍が早くなる。この点だけ抜いてよく見てみると、いわゆる「臨戦状態」に近い状態です。草食動物であれば、捕食される危機を察知したとき。肉食動物であれば、獲物を見つけて襲いかかろうとするタイミング。どちらも生命の危機が関わっている状況で、本能的に取る状態になります。つまり、あなたが緊張するとき、それは命の危機を感じ、生き残るために最善の行動ができるよう本能的に準備をしている段階なのです。

しかし、このとき普段とはまったく違う体の状態となります。人間の場合、理性が邪魔して「普段と違う=良くない状態」と認識してしまうため、緊張状態を良くないことと捉えてしまいます。命の危機という場面も、なかなか遭遇することは無いですしね。そう思うことで、ますます緊張状態は加速してくでしょう。その結局、必要以上に緊張してしまい、上手く動けなくなってしまいます。

大切なのは、緊張すること自体は問題なく、むしろ正常なことだと理解すること。そして、良くないのは緊張をネガティブに捉えてしまい、結果ますます緊張して動けなくなってしまうことです。

緊張しているということは、それだけその直面している状況に対して、あなた自身が本能的に人生の重要な局面だと理解し、体を準備させているということです。もっと言えば、その状況に対して本能的に、自分の力で乗り越えられると理解している証でもあります。だからこそ、「戦う姿勢=緊張状態」を作り出しているのです。そうじゃなければ、「逃げる」の一択になるはずですから。

あとは理性がGOサインを出してくれれば、体は勝手に動いてくれます。そう考えると、緊張することもいくらかポジティブに捉えられてくるのではないでしょうか。

「そもそも、なぜ緊張してるのか?」を考える

では、なぜ自分がそこまで緊張するのか。このことを、一歩引いて観察してみるのもいいかもしれません。前項で書いた通り、緊張しているということは、本能的に重要な局面だと理解しているからです。では、「なぜ自分は目の前の状況に対して、それほどまでに重要だと思っているのか?」を突き詰めていくと、意外と今やるべきことが単純だと分かるかもしれません。

例えば私なら、レース前の緊張。ガチガチに固まってしまい、頭も上手く働かない。そんな中で、その緊張を解くことにいくら意識を注いでも、当たり前ですが上手くいきません。レースという緊張の原因が取り除かれていない以上、いくら誤魔化したところで、結局また緊張することになりますから。

だとすれば、緊張の原因はレースです。「上手くできるだろうか」「失敗したらどうしよう」という気持ち。裏を返せば、それはなんとしてもレースで思い通りの成績を残したいという、強い思いの現れであるでしょう。それこそが、目の前の現状を重要視している理由になります。そうであるなら、そこから逆算して今成すべきことはなにかを考えればいいのです。

例えばレース前のウォーミングアップの時間であれば、まずはレースのことを頭の隅に置いてウォーミングアップする。あるいは、前日なら準備をするなど、緊張の原因が避けられないものなら、そこに向けて今できる最善を実行していくしかないでしょう。見ようによっては、諦めとも取れてしまうかもしれません。しかし、避けようのないことなら、ときには逆らわず流れに身を任せながら、自分の準備を粛々と続けていくほうが良いこともあるのです。

緊張を無理に抑えこもうとしない

よく、緊張を取り除くとか、最大のパフォーマンスを引き出すには緊張してはいけないとか言われますが、私はそうは思いません。あくまで個人の経験による感想ですが、緊張してしまうほどの状況を前に、緊張を取り除いてリラックスした状態を作り出してしまうと、逆に上手くパフォーマンスを発揮することができなくなります。

最初にご紹介した、臨戦態勢の例でご説明しましょう。命の危機的状況なのに、家でコーヒーを飲んで寛いでいるのと同じ状態で構えていては、咄嗟に逃げることはできません。緊張するのは、緊張状態にあった方がパフォーマンスを発揮できると体が認識しているから。それを無理やり変えてしまっては、上手く体が動くはずもないでしょう。

良くないのは過度に緊張してしまうことであって、緊張してしまうこと自体ではありません。そう構えられた方が、いざ緊張したときも余裕を持っていられますし、いくらか楽に物事に当たれると思います。要するに、思い詰め過ぎないことが一番ということです。

緊張と上手く向き合えばパフォーマンスは何倍にも跳ね上がる

緊張するのは仕方のないことです。私の場合は、レースのたびに緊張します。そんなとき「緊張してしまうとパフォーマンス落ちる」なんて考えて苦しんでいたら、そちらにばかり気を取られて肝心のレースに集中できません。そうではなく、むしろ「緊張は自分をレースへと向かう精神状態にしてくれるトリガーだ」くらいに考えた方が、たとえ緊張しても「レースに向けてスイッチ入った」と感じることができますし、過度な緊張の防止にも繋がります。特に私たちトライアスリートは、シーズンが始まるとほぼ毎週末、レースに出場することになります。日常と非日常をキッパリ分けて、いわゆる臨戦態勢に入るためにも緊張というものは必要です。結局のところ、自分自身がどう捉えてどう考え、そしてどう思い込むかという問題になります。

しかし、確実に1つ言えることは、無理に抑え込むために精神力を削るよりも放置して気せず、その分の精神力を別のことに傾けた方が、パフォーマンスは何倍にも跳ね上がるだろうということです。

私自身も子どもの頃からレースの度にとんでもなく緊張してしまい、その度に上手く行ったり上手く行かなかったりを繰り返してきました。正直に言うと、私は緊張に対する明確な対処方法を見つけきれてはいません。しかし、今回ご紹介した4つの事柄は、抑えておけばいくらかポジティブに、緊張感に対して向き合えるようになるものだと思います。

そして、緊張感とポジティブに向き合えるようになれば、少なくともパフォーマンスが低下することはなくなるでしょう。皆さんも、もし緊張してどうしようもない場面に出くわしたら、このことを少し思い出し、その緊張感と向き合ってみてください。きっと、上手く行くようになるはずです。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

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