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卓球・伊藤美誠が世界ランク2位 時代に逆行「表ソフト」でも強いわけ

◆世界ランク2位伊藤 国際大会優勝

日本女子卓球のエース伊藤美誠が今月発表された世界ランキングで、自己最高に並ぶ2位に浮上した。その力を証明するように、ドーハで行われている国際大会のシングルスで優勝した。伊藤の最大の特徴は、世界のトップ選手では「常識破り」、「絶滅危惧種」ともいわれている「表ソフト」を使っていることだ。

卓球選手のプレースタイルを象徴し、命ともいえるラケット。その両面にはラバーと呼ばれるゴムのシートが張られている。スピードやスピン、コントロールなど、何を重視するかによって使用するラバーは変わる。現在、トップ選手が使うラバーは主に3種類で、それぞれに長所と短所がある。

 

【裏ソフト】

粒のない平らな面を表にしたタイプ。ボールとの設置面積が大きいため、ボールが接着して回転がよくかかり、コントロールもしやすい。その反面、回転の影響を受けやすい。

 

【表ソフト】

表面に粒があるタイプ。裏ソフトとは対照的に、ボールとの設置面積が小さいため、回転の影響を受けにくい。一方、回転をかけにくく、バウンドすると失速しやすい。

 

【粒高】

表ソフトと同様に粒の面を表にしているが、表ソフトより粒に高さがあるのが特徴。表ソフト以上に回転の影響を受けにくい。相手のミスを誘うカットマンに適している。

 

◆時代に逆行「表ソフト」で勝てるわけ

卓球界では「裏ソフト」が主流となっている。ボールにしっかりと回転をかけられるためだ。近年は攻撃に重点を置くスタイルが有利とされ、相手のミスを誘う速いボールを台に収めるには、弧を描くようにドライブをかけることが最もコントロールしやすく理にかなっている。勝利への一番の近道と考えている選手が多いからこそ、男女を問わず大半の選手が「裏ソフト」を選んでいる。

 

そんな中、伊藤は世界トップクラスのでは唯一ともいえる「表ソフト」を使う選手。「表ソフト」は回転の影響を受けにくく、速いボールを打ちやすい。しかし、回転をかけにくいため、初速は速いがバウンドすると失速して相手のチャンスボールとなる。また、回転が少ない真っすぐな軌道はコントロールが難しくミスも出やすい。

 

それでも、伊藤が「表ソフト」で勝てる理由は、突出した技術にある。それを象徴するのが「バックハンドのスマッシュ」。回転をかけたサーブを打てば、相手のレシーブには回転が残る。伊藤はその回転を利用して、回転をかけにくいと言われる「表ソフト」でドライブをかける。「表ソフト」が持つ初速の速さを保ちながら、弱点の回転不足を技術で補う。常識を覆す“両取り”。難しいはずのコントロールも精度を上げている。稀有な存在だからこそ、相手選手も予測や対策を立てることが難しい。伊藤が卓球王国・中国の選手とも互角に戦えている理由だ。

 

伊藤は、開幕まで半年を切った東京オリンピックの日本代表に内定している。前回2016年のリオオリンピックでは団体で銅メダルを獲得し、卓球史上最年少のメダリストとなった。常識破りの「表ソフト」で世界の頂点に立てば、再び世界を驚かすことになる。