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◆不適切受給165人 総額2億円弱

新型コロナウイルス対策で国が中小事業者や個人事業主を支援する持続化給付金を不適切に受給していた問題で、日本中央競馬会(JRA)は調査結果を発表した。中央競馬の全ての調教師と騎手、および調教助手ら厩舎従業員合わせて2748人に聞き取りをした結果、165人が給付金を受給していたことが明らかになった。

 

日本中央競馬会の後藤正幸理事長は「あってはならないことであり、中央競馬の信頼に関わる問題となったことにつきまして、お客様ならびに社会の皆様に心よりお詫び申し上げます」とコメント。日本調教師会の橋田満会長も「税理士等の関与があったにせよ、持続化給付金の制度の趣旨を十分理解せず、安直に申請・受給しましたことにつきまして、誠に遺憾であり、深くお詫びする次第であります」と謝罪した。

 

この問題は、新型コロナの感染拡大によりレース成績に応じた報酬が減少したなどとして、調教助手らが給付金を受けっていた。しかし、中央競馬は観客を入れずに開催を継続。昨年のレース数は過去最多で売上も前年を大きく上回り、レースの賞金や手当は減っておらず、不適切な受給だと指摘されていた。そして、大阪市の税理士が関係者に説明文書を配り、この受給を指南したという。

 

◆規模拡大の背景に「集団心理」

競馬ファンからは落胆や怒りの声が上がっているが、驚きだったのは不正受給の規模だ。調教師や騎手ら総勢165人に及び、総額は1億9000万円に上った。ここまで広がった背景にあるのは「乗り遅れたくない心理」。

 

スポーツ紙の競馬担当記者は「手間をかけずにおいしい思いができると噂が出てから、関係者の間に話が一気に広まった。もらえるものはもらわないと損をすると口にする関係者もいた。勝ち馬に乗るというか、集団心理のようなものが働いたんだと思う」と指摘した。

 

JRAによると、受給した給付金はすでに返還したり、返還手続きを進めたりしている。日本騎手クラブの武豊会長は「制度の趣旨・目的等を十分理解せずに、一部の騎手が申請・受給を行ったことについて、日本騎手クラブを代表して、心よりお詫び申し上げます。今後このようなことが無いようあらためて騎手全員に厳重に注意してまいる所存です」とコメントした。

 

ただ、競馬ファンからは実名の公表や厳しい処分を求める声もあり、信頼を取り戻すのは簡単ではなさそうだ。

By New Road 編集部

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