公園でよく見かける雲梯(うんてい)を久しぶりに試してみて、ショックを受けたことがある大人は多いのではないだろうか。子どもの頃によく遊んでいた遊具のはずなのに、鉄棒にぶら下がった途端に腕や肩が痛み、1~2段進んだだけで降りてしまう。あるいは、まったく前に進むことができない。もしそんな経験があるなら、そこで諦めずに、雲梯を日々のトレーニングに含めることをおすすめする。

アメリカでは、雲梯のことを「Monkey Bars」と呼ぶ。実際に、サルが軽々と雲梯をこなしているところを見られる動物園も少なくない。日本と同様、子どもの遊具としてのイメージが強いが、それだけではない。大人のトレーニング器具としての一面もあり、軍隊や警察学校などの訓練施設には必ずと言ってよいほど設置されているくらいだ。スパルタンのような障害物レースにも、雲梯はよく登場する。

雲梯では広範囲な筋力を鍛えることが可能だ。腕、肩、背中の大きな筋肉に加え、握力の向上にも繋がる。移動する距離を長くしていけば筋持久力を高められるし、動きやスピードに変化をつけて、異なる刺激を筋肉に与えることもできる、とても優れた自重トレーニング器具なのだ。

ここで、そんな雲梯を利用したエクササイズをいくつかご紹介する。次に公園などで雲梯を見かけたときにでも、ぜひ試してほしい。

目次

エクササイズ1:腕を伸ばし、スイングする勢いで移動する

もっとも基本的な動作であり、子どもが雲梯で遊ぶと大抵このスタイルになる。両腕を伸ばし切り、体をスイングさせた勢いを利用して前に進む。スイング幅を大きくして、2段抜き、3段抜き…と移動距離を長くしていくこともできる。

腕力に頼ることが比較的少ない動作だが、それでも最低限の筋力は必要になる。移動が上手くできない人は、まず鉄棒にぶら下がるところから始めるとよいだろう。

エクササイズ2:前向きのままで素早く移動する

雲梯を競技として取り組むのであれば、この動作が移動のスピードを上げることにもっとも適している。両手を前方に向け、肘を曲げる。体全体を前に向けたまま、小刻みなステップを踏むような感覚で前に進む。この動作では、腕力が主な推進力となる。しかし、リズムをつけるために、両足を回転させるとスピードが増す。

エクササイズ3:両手を中央に向ける(neutral grip)懸垂

普通の鉄棒で懸垂すると、両手の向きは前方、あるいは後方になる。前者を「Pull Up」、後者を「Chin Up」と呼び、主に使用する筋肉が微妙に異なってくる。しかし、雲梯を利用するとその2つに加えて、両手を向かい合わせたグリップ(「neutral grip」)でも懸垂を行うことが可能だ。両手の幅を変えることで、異なる刺激を筋肉に与えることもできる。

なお、「neutral grip」は両手を前に向けたグリップ(「pronated grip」)より力を込めやすいので、片腕懸垂の練習にも向いている。

エクササイズ4:横移動

前方ではなく、鉄棒を横方向に移動する。端から端まで移動したら、次の鉄棒に移ろう。鉄棒を握っている時間が長くなるため、握力強化に効果がある。

日本に求められる大人向けの鉄棒と雲梯

日本では、大人用の高さを持つ鉄棒や雲梯を見つけることが難しい。大抵の公園には子ども向けの低いものしかないだろう。安全への配慮かもしれないし、あるいは大人の運動が軽視されているせいかもしれない。せっかく、誰にでも手軽にできるトレーニングなのに、これはもったいない話だ。

それでも、探せばきっとあるはずだろう。筆者自身、日本国内のあちこちで大人用の鉄棒や雲梯を見つけてきたし、ここでご紹介したエクササイズ1~4も、沖縄県石垣島の公園で行ったものだ。

一人でも多くの大人が鉄棒や雲梯に取り組むことで、公園を管理する側もそのニーズに気がつくかもしれない。構造が単純でメンテナンスも不要。そんな優れたトレーニング器具が、もっと普及すればよいのにと思う。

By 角谷 剛 (かくたに ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。

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