英連邦諸国(イギリス、オーストラリア、インド など)で盛んに行われており、その競技人口は世界第2位とも言われるクリケット。一見すると野球にも似た球技だが、日本ではあまり馴染みがなく、あまり詳しく知らないという人は多いだろう。しかしこの度、そんなクリケットで“日本人初”となるプロ選手が誕生した。それが、女子日本代表強化選手団の宮地静香さんだ。

クリケットとは?

まずは、クリケットという競技についてご説明しよう。サッカーに次いで世界第2位の競技人口ともいわれるが、日本でもジュニアを中心に少しずつ競技者が増えているようだ。ここで、まずはクリケットのルールなど基本事項を確認しておこう。

クリケットの試合は芝生のグラウンドで行われ、男子の国際規格(横約140m/縦約130m)では野球場より大きい楕円形。ただし競技者の年齢や性別、あるいは競技レベルによっては、これに限らずグラウンドは小さくなる。

試合は1チーム11人。交互に守備・攻撃を1回ずつ行い、ポジションは以下の通りだ。なお、ボウラーとウィケット・キーパー以外、各ポジションの配置は自由となっている。

  • ボウラー(投手)
  • バッツマン(打者:ストライカー、打者のパートナー:ノンストライカー)
  • ウィケット・キーパー(捕手)
  • フィールダー(守備)

グラウンド上には2カ所にウィケット(3本のスタンプ=棒に2本のベイル=横棒を乗せたもの)が設けられ、それぞれにバッツマンが立つ。ボウラーは一方のウィケット近くから反対側にあるウィケット目がけえてボールを投げるが、バッツマンはこれを“打つ”ことによって阻止。そしてバッツマンがボールを打った場合、2人のバッツマンはお互い反対側のウィケットに向かって走り、無事に辿り着けると1点、往復できれば2点が加点されるルールだ。2点に限らず何往復でもして得点を稼げるが、反対のウィケットに辿り着く前にボールが返球され、これがウィケットに当たれば、当たった側のウィケットに向かって走っていたバッツマンがアウトになる。

なお、たとえボールを打ったとしても、必ず走らなければいけないわけではない。アウトになりそうなら走らず、次の打球を待つことができる。また、野球のようにファウルはなく、打つ方向は365度どこでもOK。空振りしても、ウィケットに当たらない限りアウトにはならない。そしてアウトにならない限り、バッツマンは何度でも打ち続けることができる。1人ずつアウトになって入れ替わるので、常に2人一組で交代になるまで打撃を続けていくという流れだ。なお、交代になるのは10アウト、つまりバッツマンが最後の一人になったタイミングで行われる。この辺りは、野球と大きく異なる点と言えるだろう。

このほかにも、詳細には色々なアウト条件などルールがある。これを機にクリケットに興味を持った方は、ぜひ日本クリケット協会のホームページなどを見てみてはいかがだろうか。

一般社団法人日本クリケット協会

日本人初のプロクリケット選手・宮地静香さん

女子日本代表強化選手団の宮地静香さんが、海外リーグとのプロ契約を締結した。これによって、日本人として初めてとなるプロクリケット選手が誕生したこととなる。2022年1月26日(水)に記者会見が開かれ、宮地さんはプロ契約の背景やこれまでの競技、また意気込みなどを話した。

宮地さんがクリケットを始めたのは2001年。キッカケは、当時在学していた同志社大学の先輩からの誘いだった。中学・高校は陸上競技に取り組んでいたが、出身が甲子園の近くということで野球好きだったとのこと。誘われた際にクリケットが野球の起源となるスポーツだと聞き、クリケットに興味を持ったのだという。実際に競技に取り組んできて、日々感じているクリケットの魅力について次のように教えてくれた。

「やったことのないスポーツだからこそ、自分の実力はどこで頭打ちになるかもわからない。だから、今でももっと上手くなるのではないかと思っているし、その可能性に限りがないことが魅力。」

その後、2006年には日本代表として『ICC East Asia Pacific Cricket Challenge』に出場。その後は70以上もの試合に出場しており、これは日本代表として最多の試合数である。現時点で日本代表としては現役最年⻑のプレーヤーであり、チームの中核として日本代表を牽引してきた。ニュージーランドやオーストラリア、イングランドといったクリケットのメッカとも言える国でもプレーし、今回『Fairbreak Invitational 2022』よりプロ契約を獲得。このリーグはFairBreak Globalが今年創設したもので、2022年5月1日〜15日にドバイで開催される。なお、参加国は30か国以上に及び、6チームに分かれて合計19回の試合が予定されているもの。FairBreak Globalはクリケットをツールとして、女性アスリートにさまざまな機会提供を行い、ジェンダー・イクオリティを目指す活動に取り組んでいる。

Fairbreak Invitational 2022(FairBreak Global)

宮地さんがプロを意識し始めたのは、ここ4~5年間ほどのこと。2014年のアジア大会が終わった後、同年代の選手たちがほぼ引退した。チームは若返ったが、その分だけ戦力はダウン。その中でチームとして勝つには時間がかかる。その一方、宮地さん個人としては、スキルがもっとも良いところに来ていると感じていた。そこで、チーム力を上げるだけでなく、その状態で自分自身の力がどこまで通用するのかという考えが湧き、プロへの気持ちに繋がったという。

とはいえ、プロ契約までの道のりは容易ではなかった。例えば過去、トップレベルでプレーしたいとアプローチしたところ、「それならば来てくれ」と言われたことがあった。しかし日本自体がトップレベルではないからと、最終的に断られた経験がある。その他にも、何度か自分でアプローチしたものの、返事がもらえないということは度々あったという宮地さん。「実力だけでは通用しないのだ」と、大きな壁を感じた経験として話してくれた。

これまで海外から見ると、「日本人がクリケットをやっているのか?」というのが最初の印象だったという。そのため、宮地さん自身も下に見られるような経験がった。プロとしてプレーすることで日本人クリケット選手が認められ、他選手にも同様の機会が開かれればと話す。また、日本代表に小学生時代から教えている2人の選手たちがおり、自身の姿を見て今より一層努力し、次に続いて欲しいというメッセージも。そして、次のように意気込みも語ってくれた。

「多くの凄い選手たちが選ばれている中、自分にどれくらいのチャンスがあるのかは未知。しかし私の特徴である左投はあまりいないので、投げることで現地に行ってから練習などでアピールしていけば、試合に出られる機会は増えるはず。一個人として今の実力が世界でどれほど通用するのか、良い機会だと思う。」

トレーニングについても工夫を重ねてきた宮地さん。年齢に応じたトレーニングに取り組むことで、フィジカルもスキルも向上したという。どう上手く身体を使ってトレーニングするか。そう考えるようになってから、力いっぱいバットを振らなくてもボールは飛ぶし、反射スピードも速くなった。現在は週4~5日・1日3時間ほどをフィジカルに当て、スキルは1日30分~1時間を週3~4回ほど。以前は、この逆だったそうだ。

日本人選手のプレーが、どれだけ世界の中で通用するのか。これは宮地さん自身だけでなく、現段階で誰にとっても分からないことだろう。日本人初のプロ契約という偉業。その先にどのような活躍と未来が待っているのか、是非とも注目したい。

宮地 静香(みやぢ しずか)

1981年11月4日生(40歳)。兵庫県⻄宮市出身、同志社大学卒、栃木県佐野市在住。佐野クリケットクラブ所属。

<受賞歴>

  • 2010年アジア競技大会銅メダル
  • 2011年日本クリケット協会・年間最優秀女子選手賞
  • 2012年日本クリケット協会・年間最優秀女子選手賞
  • 2016年日本クリケット協会・年間最優秀女子選手賞
  • 2017年ワールドカップ東アジア太平洋予選・大会ベストイレブン
  • 2017年日本クリケット協会・年間最優秀女子選手賞
  • 2019年東アジアカップ・最優秀打者賞

▼参考
プレスリリース「日本人初のプロクリケット選手誕生!宮地静香選手が海外リーグとプロ契約」

[著者プロフィール]

三河 賢文(みかわ まさふみ)
New Road編集長。“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
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