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マイナースポーツで世界に挑戦するための”選手兼コーチ”という選択|パデル・庄山大輔選手コラム④

メジャースポーツと異なり、環境面でさまざまな厳しい現実を突きつけられるマイナースポーツアスリート。パデルプレーヤーとして活動している私もその一人です。マイナースポーツでよく耳にするのが、「選手活動だけでは食べていけないからコーチをしている」という話。しかし私はむしろ逆に、「コーチ活動をしているから選手として挑戦できる」のだと感じています。

国内における現在のパデルと私の立ち位置

私がテニスからパデルに転向したのは6年前、40歳のときです。それまでは、ずっとテニスコーチをしていました。そして3年後の2019年にアジアチャンピオンとなり、同年にパデル唯一のプロツアー「WORLDPADELTOUR」にアジア人で初めて出場。それから2年経った今、私はもう一度世界に挑戦しています。

パデルの実情をあまりご存じない方にとっては、アメリカンドリームならぬ「オジサンアスリートドリーム」と言わんばかりに良い面が強調されて聞こえるかもしれません。しかし、サッカーやテニスのようなメジャースポーツと比べると、パデルは知名度や競技人口、そしてプレー環境もまだまだ。当然ながら大会に勝っても賞金はなく、幸いなことにスポンサーがついたとしても、他のプロスポーツ選手のように金銭的なサポートを受けられるということもありません。ですから国内大会はもちろん、WORLDPADELTOURのような海外大会に出る際の費用(航空券、宿泊費、現地での交通費や食費 など)も自費。出ていくお金は決して少なくないのです。

ですが周りを見渡してみると、パデル以外にも(今はまだ)マイナースポーツという立ち位置の競技をしているアスリートはたくさんいます。トーナメントで優勝すると賞金が何千万円もらえるとか、年俸が億を超えるといったことは当分先であろうマイナースポーツ。なぜ、そういったアスリートの方々は人生を費やして練習に励んでいるのかを知りたくて、最近よく本やインタビューなどを読んでいます。

実は挑戦しやすいコーチという仕事

なぜ、コスパの悪いマイナースポーツに競技として取り組んでいるのか。そう聞かれたら、答えは「好きだから」「楽しいから」に尽きます。でも私がこう言うと、「庄山さんは特別だよ」「でも稼げないでしょ」などいった声もよく返ってきます。「やりたいけど、仕事を辞めてそれやったら奥さんに怒られるから」なんてことも言われますが、そのたび私は(結果論ですが)幸運だなと思うのです。自分のやりたいことを応援してくれない奥さんと、この先もずっと一緒にいようとしている、その人が心配になってしまうのも正直なところですが…そんなことは口が裂けても言えません。

少し話は変わりますが、私が今回改めてWORLDPADELTOURに挑戦するためスペインに行くとなってから、国内の若い選手何人かとかなり長い時間をかけて話しました。自分と似たような目標を持っている若い選手がいたら力になりたいという思いもあり、何人かの選手に声を掛けてみたのです。すると、数名の選手から「話を聞いてみたい」という反応がありました。中にはそれまであまり話したことがない人もいたので、それだけ思うものがあったのでしょう。

お題はもちろんパデルですが、プレー以外の話もしました。自分の目標を人に言うのは、それなりに勇気がいるもの。そもそも、その目標を目指して良いのかという迷いや不安を話すのは、もっと勇気が必要です。でも、それを話してくれたことが私にとってはなぜかとても嬉しく、私のできる範囲でお手伝いしたいと思いました。選手によって年齢や置かれている環境はさまざまですし、目標も人によって異なります。しかし共通しているのは、「本当にその目標にするのか」「本当にその目標に向かって進んで良いのか」という葛藤を抱えていたこと。話していくうちに選手たちの言葉に力がこもってきたのが感じられたとき、とても嬉しかったのです。恐らくこの感情は、選手活動しかしていなかったら出てこないものではないでしょうか。これを嬉しく感じるのは、私がコーチを生業としてきているからだと思います。

パデルというマイナースポーツで世界に挑戦するうえで、この「コーチ業もしている」というのは、他の選手にはないアドバンテージだと考えています。 なぜなら、今パデルに投資している時間もお金も、(引退した)後で回収できると分かるからです。もちろん、私と同じように世界に挑戦する道を選んでくれる人がいたらそれが一番ですが、そうでなくとも、パデルに真剣に関わるということを“決める”選手がいるということが嬉しい。これはテニスコーチ時代から同じですが、実際には決めないままなんとなく続けている選手が多いからです。

「(悪い意味で)いいとこ取りしたい」

「上手くいかなかったときの逃げ道を残しておきたい」

という選手は少なくありません。しかし、決めた後に複数の選択肢を持つのと、複数の選択肢を持っておいてその中から決めるのはまったく違います。 どっちが良い悪いはなく、向き不向きの問題なのでしょう。しかし、私の場合は力を分散させたり、「一つのことに集中させていたらどうなってたかな」と後悔したりするのが嫌なタイプなので前者です。

「庄山さんは(世界に挑戦することを)どうやって決めたんですか?」

と聞かれることは少なくありません。これまでは「後悔しない」「ワクワクする」のはどちらか考えて決めていると答えていました(実際にそうなので)。しかしこれからは、「コーチをしているから」も付け加えようと思っています。

後悔しない、ワクワクする挑戦を

人というのは死ぬ間際になると、以下の事柄を後悔する人が少なくないそうです。

「他人にどう思われるかなんて気にしないで、自分に正直に生きれば良かった」

「働き過ぎなければ良かった」

「もっと自分を好きになれば良かった」

「あのとき一歩を踏み出していれば良かった」

やってみたいけど、上手くいくかどうかわからないもの。これに対して世間体やコスパ、確率(や年齢)を気にして無難な方を選び、死ぬ間際に病院のベッドの上で

「あのとき無難な方を選んでおいて良かった!」

「可も不可もなく不可もない人生が送れて良かった!」

と思うことは、間違いなくないだろうと分かっています。ですから私は前述のように後悔しない、ワクワクする方を基準に決めています。もしそのワクワクが、パデルで見つかったのならとても嬉しいです。もちろん現実的に、会社勤めの方が私と同じように挑戦できるとは思いません。しかし、自分なりのワクワクが見つかっているのなら、ぜひ挑戦してみて欲しいと思います。

これまで私は、パデル選手に関することをほぼ経験してきました。パデルに関する目標であれば、何かしらのアドバイスを差し上げることはできるはずです。ご興味があれば、ぜひパデルの世界に足を踏み入れてみてください。 そのとは、「庄山コーチ」がサポートしますよ。

[著者プロフィール]

庄山 大輔(しょうやま だいすけ)
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。

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