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パデルの国別対抗戦「WORLD PADEL CHAMPIONSHIP」(後編)|パデル・庄山大輔選手コラム

WORLD PADEL CHAMPIONSHIPの本戦出場国には、FIP(国際パデル連盟)から五つ星ホテルが割り当てられます。カタールの五つ星ホテルにはジムやジャグジー、サウナ、プール、レストランなど、すべてのものが揃っていました。選手やチームがプレーにだけ集中できる環境が、ホテルでも会場でも完璧に整っています。

私は今回、男子の予選から帯同しています。本戦会場に足を踏み入れたとき、そして本戦出場国に割り当てられているホテルに足を踏み入れたときは、さすがに「本戦(に入った)というステータス感」を感じずにはいられませんでした。今回アジア・アフリカ予選が開催されたUAEの会場やホテルでも十分なホスピタリティを感じましたが、本戦会場でのホスピタリティはその何倍も上という印象です。そして現地の方々が皆さん優しく、友好的だったことも強く覚えています。

「日本代表」は近いが「世界」は遠い

テニスのグランドスラム大会などでは、予選と本戦の違いを「天国と地獄」などと言うことがあります。本戦と予選で会場が違うのもちろん、予選で負けた選手は原則として本戦会場に入れません。どうしても入りたい場合は、本戦に入った選手に「ゲスト(やコーチ)」としてIDを申請してもらえれば入ることも可能です。しかし、ライバルでもある選手からIDをもらうわけですから、その心境は複雑でしょう。今回の男子代表は、若干これに近いものがありました。

今回のWORLDPADELCHAMPIONSHIPに賞金は出ません。しかし、予選と本戦では交通手段や費用、ホテルのグレードや宿泊費の有無、食事の有無、練習ボールやコートの有無などを含め、すべてのホスピタリティに違いがあります。そのため、ある意味でホスピタリティが充実しているということは、選手にとって賞金が出ていることと同義でしょう。だからこそ、テニスでは予選を経験して本戦に上がっている選手は、二度と予選スタートとならないよう必死になります。また、予選でもがいている選手も、一刻も早くこの状況を脱出しようと努力するのです。

すでにパデル強豪国である諸外国などでは、国内でこういった競争が行われているのでしょう。しかし現状、日本のパデル界では競技人口が少ないため、こういった「競争下の中で生まれる(良い意味での)差別」が現れるほどに競争は激しくありません。これには、メリットもデメリットもあります。デメリットは、よく言われる「ハングリーさ」が醸成されにくいこと。パデルはテニスとスカッシュのハイブリッドスポーツと言われるだけあって、テニスとの親和性が高いと言えるでしょう。ですから、元テニスプレーヤーがパデルを始めると、競技人口の少なさも相まって2~3年で日本代表になれてしまいます。実際に私も、パデルを始めて3年で日本人として初のパデル日本代表になりました。

国内においてパデルは、他のメジャースポーツでは考えられない早さで日本代表になれてしまうという現実があります。もちろん私を含め、それまでテニスで努力してきた時間を含めると、決して短い道のりとは言えません。パデルに移行し、テニスで重ねてきた努力が結実したと考えることもできるでしょう。また、これはどのスポーツにも共通していることですが、大抵のスポーツでは男子の方が競技人口は多くなります。これはパデルも同様で、今回の女子代表はアジアアフリカ予選を行なうことなく本戦にストレートインしました(コロナの影響で予選参加を見送った国があったことも影響)。これは、日本だけではありません。13・14位決定戦で対戦したデンマークチームの中にも、パデル歴2年で代表選手になった選手がいました。女子日本代表の吉元キャプテンが通訳してくれたのですが、その選手は元バドミントン選手で、現役のバドミントン選手の頃はオリンピアンと共に練習していたと言います。ですから多少の差こそあれ、どこの国も同じ状況にあるのかもしれません。

どうしたら世界に食い込めるか

日本国内の話に戻しましょう。国内では勝てるし、日本代表として世界各国の選手と素晴らしい環境下でプレーできる可能性がある一方で、チームとしても個人としても現状から一つ階段を登ろうとすると急に高い壁が立ちはだかります。ここは正直なところ、選手個々の力だけでは現状どうにもできない高い壁です。この壁にぶち当たった後、果たしてどうするのか。これはパデルを辞めたり競技としてのパデルから退いたり、あるいは現状維持や壁を越えようとするなど選手によって異なります。そして、どれも間違ってはいなません。

今回、女子は前回と同じ14位という成績で大会を終えました。2回出て2回とも同じ順位。男子も前回と同様、今回もあと一歩のところで予選決勝で負けています。日本パデル協会として、あるいは一人の選手としてこれをどう捉え、今後どうしていくのか。現状維持で構わなければ、この3年で取り組んできたことを続ければ良いでしょう。しかし、現状から一つでも上に行くのであれば、この壁を越えるための何かをしなければなりません。とはいえ、このコロナ禍では海外に行くのも容易ではないため、パデル先進国であるヨーロッパや南米に武者修行に行くのも容易ではないでしょう。これは私見ですが、二年に一度しか行われない「世界大会」に標準を合わせるより、毎月もしくは毎週のように行われている「世界ツアー」を視野に入れて活動した方が、選手たちにとっては頑張り甲斐があるような気がします。また、協会としてもピンポイントで強化活動ができるため、その方が良いのではないでしょうか。個人的な今後の中・長期的な目標としては、これを少しでも仕組み化できるよう取り組んでいきたいと考えています。

最後に、現在の世界のパデル界を取り巻く環境をお伝えしておきます。パデル界にはプロツアーが2つあり、来年・再来年にもう一つずつプロツアーを発足させるという話が出てきているようです。日本ではまだマイナースポーツですが、数年後には全世界で爆発的な広がりを見せるスポーツとなる可能性を秘めています。

私は新たな取り組みとして、「パデルアカデミー」を設立します。これは世界のパデル選手が実践している技法の基礎を、極めて高いレベルで習得することを目的とするもの。基本だけでなく、さらにアップデートした知識・技術を身につけられる環境です。個々人に合わせた指導により選手を育成していきますので、パデルに興味のある方はぜひ門を叩いてください。また、ビジネスとして支援いただける方々も、パデルの未来を創るためスポンサーとして求めています。一緒に、世界を目指しましょう。

[著者プロフィール]

庄山 大輔(しょうやま だいすけ)
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。

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