大相撲初場所は10日目を終えた。きのう初黒星を喫した大栄翔は、北勝富士を突き出しで破って9勝1敗。カド番脱出を決めた大関・正代に1差をつけて優勝争いの単独トップを守った。初優勝に向けて連敗が許されない一番で、同郷の先輩を退けた。

 

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◆同郷の先輩から白星 9勝1敗で単独トップ

ともに押し相撲。大栄翔にとっては先場所敗れ、通算成績も5勝6敗と分が悪い相手だった。鋭い立ち合いで先手を取ると、北勝富士を突き放して一気に攻めた。初日からの連勝が9で止まった影響を感じさせない万全の内容だった。

 

◆強豪校・埼玉栄高校出身

大栄翔は埼玉県朝霞市出身。地元にある全国屈指の相撲強豪校・埼玉栄高校に進学した。きょう対戦した北勝富士は、埼玉県所沢市出身で高校の1学年先輩。兵庫県出身の大関・貴景勝が相撲留学したように、埼玉栄高校出身の関取は一大勢力になっている。今場所の幕内42人のうち、日本人力士は31人。その中で8人が埼玉栄の卒業生だ。十両にも同校出身の関取が5人もいる。

 

◆埼玉県の悲願 初優勝に期待

引退した力士でも、大関まで登りつめた豪栄道、上位陣に強かった元関脇の追風海や、元関脇・妙義龍に元小結・豊真将ら、多くの三役を輩出している。首都圏で人口が多く、相撲の名門校もある埼玉。しかし、意外にも県内出身力士が幕内優勝したことがない。貴景勝も豪栄道も、生まれ育ったのは関西。今場所の主役となっている大栄翔には、埼玉初となる賜杯の期待がかかっている。

 

◆都道府県別では北海道が1位

都道府県別では、最も多くの優勝力士が出ているのは北海道。その数は120回に上る。大鵬や北の湖、千代の富士や北勝海といった歴代横綱の出身地。次いで、22回の優勝を誇る貴乃花や、名大関の栃東らの東京。隆の里や旭富士といった横綱を輩出した青森が続く。

 

近年は、朝青龍や白鵬、鶴竜らのモンゴル勢を中心とした外国人力士が優勢で、日本人の優勝は減っている。そして、都道府県の勢力も大きく変わっている。北海道出身力士の優勝は1991年3月の北勝海が最後で、30年間も出ていない。関取は十両に旭大星と矢後の2人がいるが、幕内はゼロ。青森県の関取も、平幕の宝富士(東前頭2)と阿武咲(西前頭3)の2人だけだ。

 

◆“後進県”から優勝力士 変わる勢力図

昨年初場所(1月)に幕内最高優勝を果たした徳勝龍は、奈良県出身者として98年ぶりだった。秋場所(9月)で優勝した正代は熊本県生まれ。優勝制度ができた1909年以降、熊本出身力士の賜杯を抱いたのは初めてだった。おととしの秋場所(9月)で自身2度目の優勝を手にした御嶽海は、長野県で唯一の幕内最高優勝力士となっている。

 

大栄翔は、あす11日目に都道府県別で3位の優勝回数を記録している青森県出身の阿武咲と対戦する。変化している大相撲の勢力図を象徴する取り組みで星を伸ばせば、埼玉県の悲願はぐっと近づく。

By New Road 編集部

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