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◆「走らない川崎」と「走る横浜FM」

川崎フロンターレは今シーズン、圧倒的な強さでJ1を制した。4節を残しての史上最速優勝。積み上げた勝ち点は過去最多の83。数々の新記録を樹立した。「88得点」もその1つだ。1試合平均2.6得点と驚異的な数字を残した。

川崎の特徴は突出したボール支配力。高い技術でボールを保持し、華麗なパスワークで相手守備を崩す。その攻撃スタイルを表す数字がある。出場選手が走った距離を示す「トラッキングデータ」。今シーズン、J1のチーム平均値が114.461kmだったのに対し、川崎は110.694km。18チームの中で一番少ない。つまり、最も走らずに、最も得点を挙げているチームということになる。

 

最近5年間の川崎のチーム平均値を見てみると、

2016年 109.668km(リーグ15位)

★2017年 109.072km(リーグ17位)

★2018年 107.323km(リーグ18位)

2019年 108.747km(リーグ18位)

★2020年 110.694km(リーグ18位)

この5年で3度もJ1の頂点に立っている川崎は、走力を使わずにゴールを重ねるスタイルを確立している。(★はリーグ優勝)

一方、川崎と同じく攻撃的サッカーを掲げる昨シーズンの覇者・横浜F・マリノスは今シーズン苦戦を強いられた。川崎に次ぐリーグ2位の69得点を記録したが、終盤に失速して9位に終わった。横浜FMの攻撃は川崎とは対照的に「走力」がベースとなっている。チームの平均走行距離はリーグ最多の121.048km。川崎より1試合平均10km以上多く走っていることになる。リーグ最多得点で15年ぶりにJ1を制した昨シーズンも18チームの中で最も多い116.647kmだった。

 

◆過密日程で成績下降

走力を必要とするチームにとって、最大の敵は疲労。横浜FMは、新型コロナウイルスやACLの影響による過密日程に苦しんだ。中2日、中3日の試合が続き、リーグ戦最後の5試合は1勝4敗と精彩を欠いた。昨シーズンも中4日以上間隔が空いたリーグ戦は19勝1分け5敗と高い勝率を誇っていたが、中3日以下になると3勝3分け3敗と数字を大きく落とした。選手層やターンオーバーなど、過密日程への課題が浮き彫りになった形だ。

 

異例のシーズンで他を寄せ付けない強さを見せた川崎。一方、新型コロナの影響で対応に苦慮した横浜FM。走らずにボールを支配するサッカーと走るポゼッションサッカー。リーグ最強の攻撃力を競う2チームは来シーズンに向け、そのスタイルをどのように磨き上げるのだろうか。

By New Road 編集部

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