アメリカンフットボール(以下、アメフト)の全米プロ(NFL)年間優勝チームを決める『スーパーボウル』が、2023年2月13日(日本時間)にアリゾナ州グレンデールで開催される。アメリカ全体でテレビ中継の総視聴者数が1億人以上になるということで、まさに国民的行事だ。

アメリカ人がそれだけ熱狂するスポーツが、日本人にとっても面白くないわけはないだろう。しかし、アメフトは初めて観戦する人にとって、ややルールが分かりにくいかもしれない。そこで、アメフト観戦を楽しむために知っておくと便利な、基本的な試合の成り立ちとルールをご紹介しよう。

目次

試合時間とダウン数

アメフトの試合はクォーター(Q制だ。1Qが15分、それを4回行うので、プレイが続いている時間の合計は60分。ただし、1プレイごとに時計が止まるため、実際の試合時間は約3時間となる。第1・2Qが前半ハーフ、第3・4Qが後半ハーフ。スーパーボウルでは、ハーフタイム・ショーの後に後半ハーフが開始される。

試合は攻撃側チームと守備側チームに分かれて行われ、どちらが先に攻撃権を取るかはコイントスによって決まる。攻撃側チームには10ヤード以上進むまでに、4回の攻撃チャンスが与えられるのだ。

攻撃方法はボールを前方に投げる「パス攻撃」か、あるいはボールを抱えた選手が前に走る「ラン攻撃」に大別される。ボールが地面に落ちるか、ボールを持った選手がタックルされて地面に倒れるとプレイが止まり、これを「ダウン」と呼ぶ。

テレビ中継画面には、ダウン数と距離が常に表示される。例えば1st & 10とは、第1ダウンで残りの距離が10ヤードあるということ。「4th & 2」なら第4ダウンで、残りは2ヤードだ。第4ダウンの後で10ヤード以上前に進めないと、攻撃権が相手チームに移る。10ヤード以上進むとダウン数は1にリセットされ、攻撃を続行できるという流れだ。

ダウン数にかかわらず、守備側の選手がパスを捕球することを「インターセプト」と呼び、その瞬間に攻守交代となる。

得点方法と点数

守備側のエンドゾーン内で、攻撃側の選手がパスを捕球するか、あるいはボールを持った選手が同ゾーン内に踏みこむことを「タッチダウン」と呼び、これが6点となる。タッチダウンの後、攻撃チームの選択肢は以下2つだ。

  • ゴール前15ヤードからのキックを成功させると1点が追加
  • ゴール前2ヤードから1度だけのプレイを選択し、これが成功すれば2点が追加

タッチダウンの前にキックで直接ゴールポストを狙うことを「フィールドゴール」と呼び、これが成功すると3点が入る。第4ダウンで、残りヤード数が多いときによく選択される方法だ。また、守備側の選手がエンドゾーン内でボールを奪うことを「セイフティ」と呼び、この場合は守備側チームに2点が与えられる。もっとも、これは稀にしか起こらないプレイだ。

選手のポジション

一度にフィールドに出てプレイするのは、各チームそれぞれ11人ずつ。ただし、試合中の選手交代には制限がない。1試合に46人まで出場可能選手を登録でき、選手たちのポジションは「攻撃」「守備」、そして「スペシャルチーム」のどれかに分かれる。

攻撃側の主なポジション

  • クォーターバック(QB:攻撃の起点となるボールを受け取り、パスを投げるか、ランニングバックにボールを手渡すか、あるいは自分で走るかを決定。攻撃の司令塔であり、チームの顔となる花形ポジション。
  • ランニングバック(RB:クォーターバックの後方に位置し、手渡されたボールを抱えて前方に走ることが主な役割。ラン攻撃の要となるポジション。
  • ワイドレシーバー(WR:クォーターバックからのパスを捕球することが主な役割。左右両サイドに一人ずつ配置される。

守備側の主なポジション

  • ラインバッカー(LB:守備ラインの後方に3人配置され、主に相手のラン攻撃や短いパスに対応するポジション。
  • コーナーバック(CB:主に攻撃側のワイドレシーバーに対応して、パスに対する守備が主な役割。

スペシャルチームの主なポジション

  • プレースキッカー(PK: キックの専門家。攻守交代時のキックオフやフィールドゴールを狙う場面に登場する。第4ダウンにボールを遠くへ蹴りだす「パント」は、別の選手が担当することが一般的。
  • キックリターナー(KR:キックされたボールを捕球し、リターン攻撃をしかけるポジション。

どんなとき反則になる?

反則があったときにはフィールドにイエローフラッグが投げ込まれ、プレイが止まる。審判団が協議し、主審(レフリー)がその結果を会場に向けて発表。反則の種類によって罰則(ペナルティ)が異なる。主審の発表には「反則の種類」「攻撃側か守備側か」「反則した選手の背番号」「罰則の内容」「ダウン数」が含まれ、試合中によく見かける反則は以下のようなものだ。

  • ホールディング:ボールを持っていない選手を掴むこと。10ヤードの罰則。
  • パス・インターフェアランス:パスの捕球を妨害すること。反則地点で第1ダウンになるので、守備側としてはダメージが大きい反則。
  • オフサイド:攻撃側がボールを動かすまでに守備側選手が攻守ラインを越えること。5ヤードの罰則。
  • パーソナル・ファウル:怪我を招きかねない(あるいは招いた)危険な行為の総称。通常は15ヤードの罰則だが、特に悪質な場合はその場で退場になることもある。

延長戦と方式

第4Qが終了した時点で両チームが同点の場合は延長戦になる。NFLの延長戦は、通常のレギュラーシーズンでは10分間の1回きりだ。ただし、スーパーボウルを含むポストシーズンでは15分間となり、しかも勝敗がつくまで何回でも繰り返される。

もっとも、延長戦はいわゆるサドンデス方式で、どちらかのチームが得点した時点で勝者となるため、それほど長い時間がかかることはあまりない。そのため、延長戦では先に攻撃するチームが圧倒的に有利だが、ここでも先攻後攻はコイントスによって決まる。もし先攻チームが攻守交代より前にタッチダウン(6点)で得点すれば、後攻チームは一度も攻撃のチャンスを得ることなく敗退となる。サドンデスの例外は、先攻チームがフィールドゴールによって得点(3点)を挙げた場合。その際には、後攻チームにも攻撃権が与えられる。

By 角谷 剛 (かくたに ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。