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陸上競技“トラックの女王”とも呼ばれた福士加代子さん。走り続け、勝つために大切なこと【3名にサイン本をプレゼント】

陸上競技女子で4大会連続での五輪出場を果たし、“トラックの女王”とも呼ばれた福士加代子さん。2022130日(日)の「大阪ハーフマラソン」で引退した後、これまでの競技人生すべてを語った書籍『福士加代子』(いろは出版)を出版した。その内容を踏まえ、さらにご本人に取材して伺ったお話を3回に分けてお届けしている。

今回は第2弾として、戦う、そして勝つために必要なエッセンス。陸上競技に限らずスポーツに取り組まれている方、あるいはビジネスや学業など何かで“勝負”している方にとっては、きっと多くの気付きやヒントがあるはずだ。なお、前回に引き続き本記事でも福士さん直筆のサイン本プレゼントがあるので、ぜひ最後までご覧いただきたい。

【第一弾】トラックレースからフルマラソンまで4大会連続の五輪出場。福士加代子さんの一番好きな種目とは

意気込まず、余裕を持った方が上手くいく

スポーツ競技において、大会本番で100%の実力を出し切ることは容易ではない。ましてオリンピックを含めた大舞台、あるいは目標にし続けてきた大会であれば、なおさらのことだろう。何かしらの競技経験のある方なら、きっと経験があるはずだ。実力を発揮し切るには疲労回復を含めた身体のコンディショニングはもちろん、メンタルの状態も深く関わってくる。

福士さんも、決してすべての大会で実力を出し切れたわけではない。むしろ、もしかしたら出し切れた大会の方が少ないのかもしれない。実際、書籍でもさまざまな大会の結果について触れられており、「こんなに苦難があったのか」と私も驚いたほどだ。そんな福士さんは、長い競技経験の中で見出した自分なりの方法論を教えてくれた。

「まず、負けることも勝つことも、すべてを“楽しむ”ことですね。私も大会に出場するとき、必ずと言って良いくらい不安はありました。でもそれを隠さず、表に出しつつも目の前の勝負をする。どんな状態であれ、そのときのベストを出すために動くだけなんですよ。『練習の成果を出そう』なんていうと痛い目を見る。だって出るときは出るし、出ないときは出ないんだから。100%と言うと『完璧にやろう』なんて思ってしまい、かえって気にし過ぎて70%くらいしか使えないもの。だから、余裕を持っていた方が良いんじゃないかなって思いますね。むしろ、狙ってないときの方がふと良い記録が出せるタイミングがあるから。周囲からも多少の指示は出ることがあっても、プレッシャーはなかったですね。ただし、ずっと1位を取るための練習しかしていません。だから、狙いは常に一等賞!前に選手がいなくなったら、もう一人くらい誰か前に速い人がいることを想定して走るんです。でもこれ、マラソンはイメージも沸かなかったですけどね。」

意気込むことが、かえって実力を出せない要因になってしまうことがある。確かに練習のつもりで気軽に参加した大会で、思いのほか良いパフォーマンスが出せたという経験は私も何度か経験したことがあった。そして何より、“1位を取るための練習しかしていない”という部分がポイントなのかもしれない。だからこそ自信が持てるし、1位だけを常に目指して走り続けられるのではないだろうか。まさに有言実行、福士さんらしさの溢れたコメントだと感じた。

海外選手たちは楽だからこそ強い

福士さんは走るのがすごく苦しかった時代も、世界で戦うのは楽しかったと書籍で述べている。そのためか大会だけでなく、2007年にはエピオピアの合宿にも参加している。その理由は海外遠征を重ねるうち、そこで出会う選手たちの練習環境を知りたいと思ったから。そこで福士さんは、日本とは違うさまざまな気付きを得たようだ。合宿を経て走ることの楽しさを再認識したようだが、実際に感じた日本との違いとは、いったいどのようなものだったのだろうか。これについて、福士さんは次のように話してくれた。

「選手たちがのびのびしているのは、やっぱり日本より海外ですね。後ろについて走っていると、こっちまで楽しくなります。あと、みんな仲は良いんですけど、ヨーイドンすると同じ仲間であれ最終的に勝負になる。まるで、周りのすべてが獲物みたいに。そのハングリーさも、日本とはまったく違いますね。でも終わった後は、お互いが称え合っているんですよ。走りも含めて無理なく生活している感じがあって、走ることが生活の一部。日本だと『走るために、こうして、こうして…』って考えちゃうじゃないですか。でも海外では、まず自分の身体があって、それに合わせて練習強度を調整している感じがあるんです。マラソンという競技も長い目で見ていて、結果がダメでも『今日はダメだったけど、明日は出せるから』みたいな。私の場合は何カ月後にレースがあるとか、合宿に来ているからその期間はどうするとか、なんとなく窮屈な感じがありました。気分が乗らなければ走っても良くない。根底として、本能的に気持ち良さを知っているんじゃないですかね。だから同年代の人でも、まるで少年少女のように感じることが多いんです。」

体調が悪ければ休むし、それでレース間に合わなければ出ない。自分の身体、あるいは自分自身に向き合っていて、無理してないからこそ走りも楽なのだという。福士さんは「楽じゃないと毎日やれないよね」と付け加えてくれた。練習は辛いもので、それを乗り越えるからこそ結果が出る。そう考える人は多いかもしれないが、それだけでは心身が疲れ果ててしまう。楽だからこそ競技を続けられるし、走ること自体を楽しめる。大会以外でも自分を追い込み過ぎていたら、勝負する前に疲れ果ててしまうかもしれない。福士さんはよくレースで笑顔を見せてくれるが、その笑顔も、これに通じるものがあるような気がした。

抽選で3名にプレゼント!『福士加代子』直筆サイン本

引退後に出版された『福士加代子』には、福士さんがこれまで経験してきたすべてが詰まっている。海外合宿でのエピソード、そして各種大会での結果や思い、喜びや苦しみまで。福士加代子という選手を形作るものが、きっと書籍を通じて垣間見えるはずだ。スポーツのみならず、何かに挑戦するすべての人々に読んで頂きたい。今回は本記事をご覧くださった方々を対象に、直筆サイン本を3冊プレゼントとしてご提供いただいた。本著を通じて、福士さんの経験をぜひ体験しみてほしい。

福士 加代子(ふくし かよこ)

1982年3月25日生まれ、青森県出身。ワコール女子陸上競技部(スパークエンジェルス)アドバイザー。高校時代から陸上競技を始め、卒業後はワコールへ入社。2002年に3,000m・5,000m、2006年にハーフマラソンでそれぞれ当時日本記録を樹立10,000mでは日本選手権6連覇を果たし“トラックの女王”と呼ばれた。さらに2016年のリオ五輪で出場した女子マラソンを含め、4大会連続の五輪出場。2022年1月30日に行われた「大阪ハーフマラソン」で引退した。

[著者プロフィール]

三河 賢文(みかわ まさふみ)
New Road編集長。“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
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