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まさに驚異的!東京2020オリンピック「トライアスロン」優勝者タイムを分かりやすく比較解説

2021年7月26日(月)、東京2020オリンピックの男子トライアスロンが開催された。優勝したのはノルウェー代表のクリスティアン・ブルメンフェルト選手。日本代表はニナー賢治選手が14位、小田倉真選手が19位という結果だった。さらに翌27日(火)には女子トライアスロンが実施。バミューダ諸島代表のフロラ・ダフィ選手が優勝し、日本代表は高橋侑子選手が18位という結果。岸本新菜選手は途中棄権となった。

トライアスロンは、一般であれば完走するだけでも称賛されることのある過酷な競技。スイム1.5km・バイク40.0km・ラン10.0kmの記録(途中の種目移動時間も含む)で競われるが、最終的なタイムを見ても、その凄さはいまいち分かりにくいかもしれない。ここで、男女とも優勝選手のタイムを分かりやすい比較を用いながら紐解いてみよう。

優勝選手の総合・パート別タイム

まずは、各女子選手の結果タイムとパート別タイムを確認しておこう。これを踏まえ、パート毎にどんなタイムであるかを解説していく。

女子優勝|フロラ・ダフィ選手

  • 総合:1時間55分36秒
  • スイム1.5km:18分32秒
  • バイク40.0km:1時間02分49秒
  • ラン10km:33分00秒

男子優勝|クリスティアン・ブルメンフェルト選手

  • 総合:1時間45分04
  • スイム1.5km:18分04秒
  • バイク40.0km:56分19秒
  • ラン10km:29分34秒

スイムパート

スイムとして目安にしやすいのが、25mという距離だろう。各選手のタイムを25mの平均ペースに換算すると、フロラ・ダフィ選手は約18.53秒、クリスティアン・ブルメンフェルト選手は約18.06秒となる。試しに機会があれば、全力で25mを泳いでみて欲しい。恐らくほとんどの方は、25mでもこのタイムを上回れないだろう。筆者もアマチュアながらトライアスロン競技を行っているが、このタイムでは25mまでしか泳げない。

あるいは比較対象として適切かは分からないが、国内における中学生男子1,500mは関東大会なら19分36秒7、全国大会で16分44秒86が出場資格である標準記録だ。しかも、これはプールであり海と違って波がない。中学男子の国内トップレベルと同程度のタイムで海を泳ぎ切り、さらに続くバイク・ランを走破しているのだ。ちなみに高校関東大会なら、男子1,500mの標準記録は17分32秒69。もしクリスティアン・ブルメンフェルト選手がバイク・スイムなしでプールを泳げば、このタイムを上回る可能性だってあるだろう。

バイクパート

バイクについては、恐らく時速に直して見てみると分かりやすい。40.0kmのタイムから考えるとフロラ・ダフィ選手は時速約38.2km、クリスティアン・ブルメンフェルト選手は時速約42.6kmだ。もはや、公道を走っていても違和感のない速度だろう。排気量が50cc以下の原付バイクは法定速度が30km/hであり、両選手ともこれより速いことになる。

ちなみに筆者は以前、山手線を路線沿いに1周走ったことがある。その際の距離は40km強だったが、これに近い距離を車レベルの速度でペダルを回し続けるわけだ。駅での停車時間など考えたら、もはや山手線より早く回り切ってしまうかもしれない。

ランパート

スイムとバイクを終えてのラン10kmは、身体に疲労が溜まった状態。私は初めてトライアスロンに出場したとき、ランで両足を攣った経験がある。そんなランパートを1km毎の平均ペースで見ると、クリスティアン・ブルメンフェルト選手3分3秒/km。筆者はいわゆるサブ3ランナー(フルマラソンで3時間切り)だが、1kmの全力疾走でギリギリの速さだ。国体の女子3,000mはA標準が9分18秒00だが、これを少し上回るペースで10kmを走っている。

さらにクリスティアン・ブルメンフェルト選手は、平均して1kmあたり約2分57秒のペース。フルマラソンの日本記録は鈴木健吾選手の2時間4分56秒だが、1kmあたりのペースはこれとほぼ同等だ。もちろん距離は異なるが、驚異的なペースで走っていることが分かるのではないだろうか。

    新種目の混合リレーにも注目!

    ここでは男女とも優勝選手のタイムをもとに見てきた。しかし実は、必ずしも優勝選手がスイム・バイク・ランとも一番速いわけではない。各パートで比べると、さらに驚くべきタイムを叩き出している選手がいるのだ。選手の中にはスイム・バイク・ランのうち、得手不得手とする種目があるケースは多い。例えばスイムが苦手でも、バイクやランが得意なら後から追い抜くこともできるのがトライアスロン競技。この駆け引きも、競技の見どころと言えるだろう。

    また、種目移動時間にも注目したい。トライアスロンではトランジッションというものがあり、簡単に言えば次のパートに移るための準備区間だ。例えばスイムからバイクならウェットスーツを脱いでバイクシューズを履き、バイクをスタートラインまで移動させる。バイクからランならバイクを片付け、ランニングシューズに履き替えて走り始めるのだ。クリスティアン・ブルメンフェルト選手は前者が39秒で後者が28秒、フロラダフィ選手は前者が41秒で後者が33秒という所要時間だった。30~40秒のわずかな時間で、異なる種目の準備を整える。これもまた、実は驚異的と言えるのではないだろうか。

    トライアスロン競技は、2021年7月31日(土)に混合リレーが行われる。混合リレーは東京2020オリンピックで初めて採用された新種目。男女2人ずつが「女子→男子→女子→男子」の順番でリレーし、そのタイムを競う。出場する日本人選手は、個人種目に出場した4名。一人当たりの受け持つ距離は個人戦より短く、以下の通りである。

    • スイム300m
    • バイク6.8km
    • ラン2km

    よりスピード感あふれる展開が予想される、トライアスロンの混合リレー。日本人チームのメダル獲得に期待を寄せる声も多く、ぜひ注目したい競技種目だ。

    ※記録等は2021年7月27日時点の情報です

    [著者プロフィール]

    三河 賢文(みかわ まさふみ)
    New Road編集長。“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
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