私は今、アルゼンチンのブエノスアイレスにいます。ロサンゼルスとチリを経由して33時間かかりましたが、無事に到着しました。到着したのは3月末だったのですが、ちょうどその日がサッカー・アルゼンチン代表の親善試合でした。2022年11月のW杯で優勝して以来振りのアルゼンチン代表の試合だったらしく、20:30キックオフだというのに私が空港を出る14:00頃ですでに道路が大渋滞。タクシーの運転手が苛立っていました。その理由を聞くと、自分もこの試合を見に行くらしく、こんなに混んでいたら間に合わない…と。

そして、驚いたのが警察官の数です。スペインでサッカー観戦したときも警備員や警察官が多いと感じましたが、アルゼンチンの代表戦となると、これだけの警官が配置されます。そのことを知り、人の数とその人たちの“熱”をコントロールするにはそれだけ必要なのだと、軽いカルチャーショックを受けました。そして同時に、アルゼンチンを訪れた理由の一つにこの熱を感じたかったというのがあるので、初日から嬉しい誤算でした。

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アルゼンチンに行くことに決めたきっかけ

アルゼンチンというとサッカーが突出していますが、他にもテニスやバスケ、ラグビーなども強豪国として認識されています。そして、今回私が渡亜した目的であるパデルも、アルゼンチンはとても強い。 強いというより、正確にはアルゼンチンは不動の王者です。これまでパデルのW杯が15回開催されていますが、そのうちアルゼンチンは男子が11回優勝しています(残り4回はスペイン)。アルゼンチン(とスペイン)の背中を、ヨーロッパや南米の各国が追いかけているのが現在のパデル界の勢力図です。

これまで私はスペインに何度も足を運び、パデルを学びつつ、現地で開催されているプロツアーにも出場してきました。ですから、、ある程度は「スペインのパデル」が分かってきています。そうなると、残るはもう一つの「アルゼンチンのパデル」を知りたいという気持ちが、少しずつですが自分の中に蓄積されてきていたように思います。 その気持ちが沸点に達したのは、2022年にアルゼンチンがW杯で優勝したときの現地の模様を見たときでした。

スポーツは「体育」「趣味」「仕事」「文化」など、いろいろな文脈で語られます。しかし、アルゼンチン国民のこの盛り上がり方は、どれにも当てはまらないと感じました。サッカー(スポーツ)に対して「生きがい」や「情熱」といった、損得勘定抜きのものが心に埋め込まれている国民をこの目で見てみたい。そして、肌で感じてみたいという思いが出てきました。競技は違えど、パデルでも同様のものが味わえるはず。しかも、サッカー同様に王者として君臨しているのだから尚更だ考えるようなり、現在ブエノスアイレスにいるというわけです。

絶望。でも、ここからが本当のスタート

渡亜する前、現地でお世話になるコーチに、どんな内容やスケジュールになるかを事前に聞いたところ、返信内容は以下のようなものでした。

  • トレーニング1.5時間
  • オンコート2時間
  • 練習試合2時間

これはテニス時代から感じている“スポーツ関係者あるある”ですが、海外の選手やコーチは大抵の場合、話を盛ります。これにはメリットもデメリットもあるというか、そうせざるを得ない事情もあるように感じているので、いつも伝えてきた内容を3割減で聞くことにしています。ですから、今回も盛っているのだろうと思っていたら…違いました。文字通り、この練習量だったのです。

一緒に練習している選手たちは10代・20代がほとんどとはいえ、平日は毎日このスケジュールをこなし、週末は多くの選手が何かしらのトーナメントに出場しています。これを目の当たりにしたとき、正直に言って絶望しました。もちろん、現在の世界王者であるアルゼンチンと、アジア圏内でもトップに立てていない日本を比べるのはアルゼンチンに失礼でしょう。しかし、それでも差があり過ぎます。また、アルゼンチンの選手がこれだけやっているのであれば、量でも劣っている日本人選手が近づける理由がありません。スペインではトレーニング1時間、オンコート1.5時間というスケジュールでしたから、アルゼンチンでのこの量には驚きました。トップ選手たちは、これ以外に練習しているときもあります。

もちろん、他のアカデミーでは違ったやり方があるとは思います。しかし、私が今回お世話になっているアカデミーは現役No.1の選手やトップ10の選手、18歳以下のチャンピオンや元チャンピオンなどが在籍しているアカデミー。間違いなく、参考の一つにはできるでしょう。スペインでも今回のアルゼンチンでも、私はとても良い環境に身を置くことができ、現地のスタッフにはとても感謝しています。 どちらも良い環境というのは間違いなく、良い選手(や良いコーチ)が良い選手を呼んでいるという好循環が起こっているように感じます。

そして、スペインパデルとアルゼンチンパデルの両方を見て感じるのは、パデルプレーヤーを花に例えるならアルゼンチンは「幹」で、スペインは「花びら」といった印象で、日本に入ってくるパデルの情報の多くはスペインのものだということ。誰もが綺麗な花びらに注目しますが、その花びらはしっかりとした根っこや幹があってこそ。引き続き、現地で綺麗な花の咲かせ方を学びたいと思います。

By 庄山 大輔 (しょうやま だいすけ)

2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。

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