毎年1月2~3日の2日間にわたって行われる箱根駅伝。前年大会でシード権を獲得した大学、そして予選会を突破した大学の選手たちが鎬を削ります。現地あるいはテレビの前での観戦を、心待ちにしている方は多いでしょう。箱根駅伝は10区間のタイムで競われますが、各区間で距離や特徴が大きく異なります。各大学の監督はコースに応じて適した選手を配置しており、その戦略も見どころの一つ。ときに、大会結果を大きく左右することもあります。

そこで、1~10区それぞれの特徴や見どころをまとめました。事前にインプットしておけば、箱根駅伝の観戦がさらに楽しくなるはずです。なお、箱根駅伝でよく耳にする専門用語やルールについても、以下記事で解説していますので参考にご覧ください。

箱根駅伝の疑問を解決!専門用語&ルール解説

目次

往路コース

1区(21.3km)

レースの流れに大きく影響を与える第1区には、多くの大学でスピードランナーが出走します。コースはほぼ平坦ですが、約7.5kmの新八ツ山橋と約18kmの六郷橋にアップダウンが。この2箇所でペースの揺さぶりなど駆け引きが行われやすいほか、六郷橋の下り坂からはラストスパートに入る選手も少なくありません。

2区(23.1km)

「花の2区」「エース区間」とも呼ばれ、2区には多くの大学でエースが登場します。距離がもっとも長いほか、13kmから現れる権太坂は勾配のきつい難所。さらにラスト3kmにもアップダウンがあり、走力のみならず精神力も試されます。1区で出遅れた大学が“ごぼう抜き”することも多く、順位の入れ替わりも見どころの一つです。

3区(21.4km)

序盤は下り坂が続いてハイスピードな展開になりますが、ここでのペース配分が後半での走りを大きく左右します。10kmを過ぎた辺りからは富士山と相模湾が臨むことができ、もっとも景観に優れた区間です。ただし、海沿いのため向かい風に苦しめられることも少なくないため、天候状況も考えたレース運びが求められます。この辺りから集団がバラけはじめ、少しずつ先頭争いの展開が見られ始めるでしょう。

4区(20.9km)

ほぼ平坦なコースですが、後半には細かなアップダウンがあるため、ペースコントロールの難しい区間です。以前は新人選手が多く走る区間でしたが、第93回大会から距離が延びました。また、往路最終かつ最難所の5区へと繋ぐ重要区間でもあるため、近年ではエース級に近い走力のある選手を登用する大学が多く見られます。

5区(20.8km)

箱根駅伝で最難関と言われ、高低差が800mを超える山登り区間です。標高が上がると気温が下がり、これが走りに影響を与えることも。7km付近で現れるヘアピンカーブ、そして16km付近からは約3kmの下り坂と、とても難しいコースになります。いかに上手く登り下りで走りを切り替えられるか。そして、箱根神社の大鳥居をくぐり、ゴールへ最初に到着する大学はどこなのか。往路優勝はもちろん、復路は往路のゴールタイム順にスタートすることになるため、2位以降も先頭とどれだけの差で往路を終えられるのかが各校とも非常に重要です。

復路コース

6区(20.8km)

復路は往路のタイムに合わせ、各校が時間差でスタートします。ときに前を走るランナーが見えないこともあり、いかに冷静に自分の走りができるのかが重要です。最初4kmほどを登ったあとは長い下り区間。ハイスピードになりやすい一方、終盤失速しないために飛ばし過ぎないことも重要です。下り坂をいかに効率よく走るか、テクニカルな面が試される区間でもあります。また、箱根の朝は冷え込むため、痙攣などのトラブルにも要注意です。

7区(21.3km)

山からの風が冷たい一方、太陽が上がり始めると気温が高くなり、気温差が選手たちを苦しめます。ほぼ平坦ではあるものの細かなアップダウンがあり、ペースコントロールの難しい区間です。次第に高くなる気温に対応できない、あるいは前半のアップダウンをオーバーペースで走ってしまうと、後半に思わぬ失速となってしまうこともあります。

8区(21.4km)

日差しと追い風によって、選手たちは暑さとの戦いになることが多いでしょう(追い風の場合、同じ方向に向かって走る選手は無風状態になるため)。また、この辺りから下位の大学は少しずつ繰り上げスタートの可能性が出くるほか、優勝やシード権争いも激化し始める区間です。15kmを過ぎると急な遊行寺坂、そして長いアップダウンが待ち構えており、ここをいかに走り切ってラストスパートできるかがポイントになります。

9区(23.1km)

2区と同じ最長距離。下り坂から始まるため、序盤でのペースメイクが重要です。最終10区へと繋ぐ重要区間であり、多くの大学でエース級の選手が走ります。優勝争いやシード権争いにも大きく影響し、鶴見中継所ではこれまでいくつものなドラマが生まれました。

10区(23.0km)

いよいよ迎える最終区間。優勝争いやシード権争いでは、ここで大逆転が見られることも少なくありません。ゴールを意識し過ぎると、オーバーペースになって想定外のトラブルが起きる可能性も。全体的には平坦なコースですが、都心部では強いビル風が吹くこともあります。なお、往路1区とは少しコースが異なり、馬場先門からは日本橋を通ってゴールの読売新聞社前へと走ります。

By 三河 賢文 (みかわ まさふみ)

“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。

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