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子どもの習い事としての剣道の魅力|剣道・三森定行選手コラム

子育て中の方なら、お子さんにどんな習い事を取り入れようか検討されているかもしれません。剣道は習い事にもおすすめの競技です。今回はその理由、お子さんが得られるメリットをご紹介します。

本能から楽しめる剣道という競技

剣道は、子どもにとって本能からの欲求を満たす競技です。試しにお子さんに長い棒を持たせてみれば、きっときっとその棒を振り回すでしょう。そして、今度は何かを叩き始めるのではないでしょうか。子どもは棒を持つと、何も教えなくても振り回し、見本を示さずとも何かを叩き始めます。これは、子どもの本能と言っても過言ではないでしょう。

さらに棒を持った子どもが2人揃うと、お互いを叩き合うはずです。もちろん、無秩序に叩き合うことは危険ですので、それ自体の良し悪しは置いておきますが、棒を持った子どもがお互いを叩き合うことも、やはり子どもに備わった本能なのではないでしょうか。

竹刀を振ったり相手と叩き合ったりする剣道は、子どもに備わった本能からの欲求そのもの。子どもにとって、剣道がつまらないわけがありません。習い事は子どもが楽しめることが一番です。

一大ブームを巻き起こした「鬼滅の刃」。このブームによって剣道に興味を持ち、剣道を始める子どもが増えたいう話をよく耳にします。子どもたちは鬼滅の刃のストーリや作中に登場するキャラクターの魅力もさることながら、剣士が刀を振り回して戦うところに強く惹きつけられているのではないでしょうか。刀を持ち、振り回すという点で、剣道は子どもたちにとって魅力あふれる競技なのだと思います。

大人との交流で多様性を学べる

剣道の現役寿命の長さにも、子どもにとって得られるメリットが隠されています。現役寿命が長い剣道は70代や80代になっても、稽古を重ねて腕を上げられる競技です。ですから、剣道の稽古場所には幅広い年代の剣道家が集まります。少年・青年剣士とともに、大人も高齢の剣道家も一緒に稽古して汗を流す。高齢の剣道家が、少年剣士たちの相手を務めることも珍しくありません。孫以上に歳の離れた少年剣士と高齢の剣道家が一緒になって稽古に打ち込むその姿は、どこか温かみがあり、微笑ましくも思えるほどです。

現役寿命が短く限られる競技では、その競技を習うことで子どもが接する大人は監督とコーチくらいでしょう。しかし剣道はけいこ場で、幅広い年齢のさまざまな大人と接する機会を得られます。家族構成の核家族化が一般的になりつつあり、接する大人が限定される現代の子どもたちにとって、社会の多様性を学ぶ貴重な機会になるはずです。

剣道を通じ、自立に向けて成長していく

この他にも、剣道が子どもにもたらすメリットはたくさんあります。もし剣道に触れたことがなければ、ご自身が剣道している場面を想像してみてください。竹刀を持った相手が、自分を叩こうと殺気だって襲いかかってくる…競技とはいえ、少し怖いと感じるのではないでしょうか。

剣道は1対1の対人競技です。当たり前ですが、相手と対峙しているときは相手と自分の2人だけの世界。どんな問題が起きても手を差し伸べてくれる人はおらず、自分で解決するしかありません。体格に恵まれた相手と対峙すれば、その体格差に尻込みしてしまうこともあるでしょう。あるいは自分より経験がありそうな相手との対戦は、勝負を諦めて投げ出したくなることだってあると思います。

それでも剣道は、打たれることや負けることへの恐怖心に打ち勝ち、相手と対峙するしかありません。これは子どもにとって、自立を育む素晴らしい経験になると思います。困難な場面から目を背けず、勇気を振り絞って脅威に立ち向かう。その体験ができることは、お子さんの習い事として剣道を取り入れることの大きなメリットです。

最初は、相手に背を向けて逃げ回ってしまったり、声を出して泣いたりしてしまうかもしれません。しかし剣道経験を積む中で、いつの間にか力強く相手に立ち向かう立派な剣士に成長していきます。お子さんが頼もしく自立していく過程を、見てみたいと感じる方は少なくないはずです。

勝利以外にある剣士としての価値

剣道は他の競技に比べ、「勝者こそ優秀」という観念が薄い競技だと思います。なぜなら相手に勝つことより、その勝負の内容の方が重視されるからです。たとえ結果が勝ちであっても、見苦しい勝ち方では剣士として恥ずかしいと指導されます。勇気を持って相手と対峙できれば、結果が負けであっても良し。先天的な運動能力に頼った刹那的な勝ちより、本人の努力によって身についた勇気の方が、剣士として価値があるのです。

中には「うちの子は運動が不得意だから心配」という方がいるかもしれません。しかし、競技力が高まることなんて剣道では副産物です。お子さんが剣道に触れることで、勝ち負けよりも大切な価値観を学ぶことができるでしょう。剣道の持つ特有の魅力を知り、興味を持たれた方は、ぜひお子さんの習い事の候補に剣道も検討してみてください。

[著者プロフィール]

三森 定行(みもり さだゆき)

剣道LABO®︎代表・剣道ファシリテーター。自身の剣道経験と映像編集技術を駆使し、社会人剣道家の上達をマンツーマンでサポートしている。東京・神奈川・千葉・埼玉にクライアント多数。全日本剣道連盟 錬士七段。1976年生まれ、45歳。