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あなたのスポーツリテラシーは高い?低い?|パデル・庄山大輔選手コラム

リテラシーという言葉があります。これは、 「理解する力」「使いこなす力」といった意味なのだそうです。ですから、例えば「あの人はメディアリテラシーが低い」という場合、新聞やテレビ、ネットなどから正確な情報を得て、自分のものにする能力が低いという意味になります。

この“◯◯リテラシーが高い・低い”というのは、さまざまな分野で耳にするでしょう。当然、スポーツにもスポーツリテラシーがあり、スポーツリテラシーが高い人もいれば低い人もいます。これは完全な私見であり仮説段階のものもありますが、今回は「スポーツとは」「スポーツリテラシーを高めるにはどうしたらいいか」について考えてみます。

スポーツと卓越

卓越とは「他のものよりもはるかに優れていること」で、競技スポーツではこれを目指します。 ただし注意しなければならないのは、他の誰よりも優れている状態を目指すのはもちろん、「以前の自分よりも優れた状態」にあることを目指すことも含まれていること。競技者はこの卓越することを願って、お金や地位に関係なく努力を重ねます。 自分の身体で卓越に近づく努力ができることは、(特に若い)競技者の特権でしょう。

卓越するとは「優れた人間存在である」ことを意味するので、このように競技者は自分の存在を証明しようとします。卓越することの喜びは、競技スポーツの原点とも言えるでしょう。では、この卓越の喜びはどこから来るのでしょうか。これについて、私は競争することの楽しさだと思います。

ルールに従ったスポーツでの競争は、日常とは完全に異なる世界です。だからこそ、すべてを忘れて夢中になれます。すべてを忘れて緊張し、余すことなく全力を出そうとし、卓越の喜びを実感できる(かもしれない)ところに競争の楽しさがあります。ちなみに、私の妹はほとんどと言って良いほどスポーツをしなません。そのため、この「自分の身体で卓越に近づく努力をすることの楽しさ」や「競争することの楽しさ」、「すべてを忘れて緊張する」といった経験をほとんどしておらず、いつも本当にもったいないなと思います。

いつもスポーツしている人からすると、当たり前すぎて気づかないかもしれません。しかし、卓越しようと努力したり試合に出て緊張してしまったり、あるいは全力を出そうと頑張ることは、スポーツしている人しか経験できないものです。この点については、忘れずにおいた方が良いでしょう。

スポーツと達成

優れた競技者は、競争の楽しさや卓越の素晴らしさを知っています。自分が全力を尽くすことの尊さを知っているからこそ、全力で戦った相手の素晴らしさも苦しみも理解することができるのです。

人間は誰しも自分を認めてほしいという欲求、自分を表現したいという欲求を持っているもの。しかし、たとえ試合に勝てなくても自分で目標を立て、それに向けて努力を重ねて納得できる結果が得られたとき、人は達成の喜びを感じることができるでしょう。負けたときでも自分が精一杯の努力をして全力で戦ったのであれば、自分に誇りを持つべきですし、これが「達成」ということなのだと思います。

スポーツにおける達成の喜びとは、ランキングが上がったり、大会で優勝したりということだけではありません。そこには、困難を克服したときに味わえる喜びも含まれています。スポーツには自分の身体を酷使して苦しい経験をしながら、自分で何かを掴み取る楽しさもあります。こういった苦しさや試行錯誤を繰り返す中でしか味わえない喜びは、競技スポーツならではのものでしょう。それが、身体の喜びです。

パデルだけでなく、すべてのプレーヤーは、最初から理想のフォームでプレーできるわけではありません。 時間をかけて試行錯誤を繰り返しながら、理想のフォームやプレーを身につけていきます。スポーツの技術は動物が行なうような自然な動きではなく、だからこそ、競技者は自分の身体を自由に操作できるよう学ばなければなりません。 できなかったことができるようになったり、自分が思い描いたフォームを身につけたりしたときの「身体の喜び」は、人間だけが味わえる喜び。スポーツする者にしか味わえない特権とも言えるでしょう。

スポーツと挑戦

競技スポーツと関わるうえで、卓越や達成を目指すことだけが人生の目的ではありません。 健康で、生涯にわたって今ある力でスポーツを楽しむことが、充実した人生を送ることにつながると思っています。 生きがいは「自分が生きている手応えを掴む」こと。 生涯にわたって(競技)スポーツ活動を継続し、自分の力に応じて挑戦を続け、生きがいを感じ続けられたら最高です。

スポーツに何を求めているのか。これが明確になっていれば、スポーツリテラシーなんて気にしなくて良いのではないでしょうか。スポーツは人間が作り出した文化です。 「やらされている、させられている」という感覚でスポーツするのは本末転倒。そうではなく「スポーツから何を得るか」について、主体的な方がいいのだと思います。疲れたらちょっと立ち止まって、自分がスポーツする意味を考えても良いかもしれません。

[著者プロフィール]

庄山 大輔(しょうやま だいすけ)
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。

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