今シーズンからDeNAでプレーする田中俊太が開幕1軍に入った。2月21日にロッテとの練習試合で初めて1番で起用されると、初回の打席でセンター前ヒット。第3打席は四球で出塁し、2試合連続の二盗を決めた。三浦大輔監督が目指す足を使った攻撃を体現している。

 

田中は、昨シーズン1番打者を務めた梶谷隆幸がFAで巨人に移籍したことに伴う人的補償で、DeNAに加入した。日立製作所からドラフト5位で巨人に入団し、プロ3年間で209試合に出場。昨シーズンは48試合で打率.265、1本塁打、6打点、2盗塁だった。

 

FAで移籍する選手に代わって、移籍先から選手を獲得できる人的補償は、1996年の川辺忠義が国内初めてだった。河野博文の補償で巨人から日本ハムに移った川辺は、1989年のドラフト会議で巨人から2位指名を受けた。1995年までの6年間で1軍出場はなく、新天地へ移った。日本ハム移籍1年目に1軍デビュー。17試合に登板して、1勝3敗、防御率4.89だった。しかし、翌1997年は1軍での登板はなく、オフに自由契約となって引退している。

 

人的補償の成功例には、俊足を武器にしていた福地寿樹がいる。2007年オフに、ヤクルトからFAで西武に移籍した石井一久の人的補償で、ヤクルトに加入した。2006年から2年間在籍した西武では、2年連続25盗塁以上をマークしたが、代走や守備固めなど途中出場が多く、出場試合数は計208試合と規定打席には到達しなかった。

 

しかし、ヤクルトでは1番打者に定着した。移籍1年目の2008年は131試合で、打率.320、9本塁打、61打点と覚醒。42盗塁でタイトルも獲得した。翌年も主力として137試合に出場し、2年連続で盗塁王に輝いた。

 

新井貴浩の補償で阪神から広島に移った赤松真人も、新天地で開花した。2007年までプレーした阪神では、3年間通算で出場したのは36試合。だが、広島では移籍1年目から125試合に出場。プロ初本塁打を放つなど、打率.257、7本塁打、24打点、12盗塁と存在感を見せた。2年目の2009年は、さらに躍進。自身初の開幕スタメンの座をつかむと、自己最多の137試合に出場し、オールスターにも初出場した。2010年は出場試合数が113試合に減ったものの、打率.285、自己最多の20盗塁をマーク。ゴールデングラブ賞も受賞した。

 

投手の成功例といえば、一岡竜司の名前が真っ先に挙がるだろう。大竹寛の補償で巨人から広島に移籍。巨人での2年間は4試合、9試合の登板にとどまったが、広島に移籍した2014年に強烈なインパクトを残した。中継ぎとして31試合に登板し、2勝2セーブ、16ホールド。防御率は0.58と驚異的だった。

 

一岡は翌年以降も安定した成績を残し、セットアッパーの座を確立。2017年には59試合で6勝2敗1セーブ、19ホールド、防御率1.85と活躍するなど、2016年からのリーグ3連覇に大きく貢献している。人的補償だということを忘れられるくらい、広島に不可欠な存在となっている。

 

中継ぎでは、和田一浩の補償で中日から西武に移籍した岡本真或が、移籍1年目の2008年にチームの日本一に貢献する活躍を見せている。他にも、移籍したチームで大幅に出場試合数が増えた選手や、移籍先で1軍に初出場した選手もいる。環境の変化は飛躍のチャンスでもある。

By New Road 編集部

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