目次

◆打率1割台でも4番を固定

開幕5連敗とつまずいたロッテが、4連勝で4位に浮上した。チームの上昇より前に上がっていたのが、井口資仁監督の評価だ。

 

監督3年目の昨シーズンは、リーグ2位で初めてAクラスに入った。若い選手を育てながら結果を残し、その象徴といえる選手が高卒4年目を迎えた安田尚憲だった。チームの将来を見据えて4番で起用している。昨シーズンは113試合で打率.221、6本塁打、54打点、106三振。4番としての期待に応える数字を残せなかったが、指揮官は今シーズンも開幕から全ての試合で4番を任せている。

 

安田は、きのう8日のオリックス戦で、2点リードの7回に試合の流れを決める2号2ランを放った。まだ打率は.195と高くはないが、得点圏打率は.467。リーグトップの14打点をマークし、勝負強さを発揮している。

 

井口監督は試合後「これからもっともっと調子を上げて、4番をしっかり守り切ってほしい」と期待を寄せた。そして、打率が1割台に低迷しても4番で起用を続けることについて問われると「チャンスに強い打者だし、選球眼も非常にいい。調子が悪くてもつなぐことができる。ずっと打ち込んでいる安田に期待を込めて起用しているので、きょうは良く応えてくれたと思う」と答えた。

 

◆他球団選手から「うらやましい」

チームの勝敗を左右する4番が打てなければ、監督の進退にも直結する。それでもぶれずに安田を起用する采配に、他球団の選手からは「うらやましい」という声が上がっているという。

 

パ・リーグを担当するスポーツ紙の記者は「井口監督から信念と覚悟を感じると選手の間で話が出ている。結果だけではなく内容やプロセスを見て判断している。安田は高校時代ずば抜けていたが、2軍でも圧倒的な成績を残したわけでもない。監督としては6番くらいに置いて、結果が出てから4番で使う方が楽なはず。それでも、自分が責任を取る覚悟で我慢強く起用しているのを見ると、本人が意気に感じるだけではなく、周りの選手も監督を信頼する」と話している。

 

この記者によると、井口監督は選手に多くを語らず、タイミングを見て短くアドバイスするという。現役時代も試合が終わればすぐに球場を離れ、チームメートと共に行動することが少ないタイプだった。井口監督は今の若い選手に合っていると指摘し「口数は多くなくても、選手のときから観察眼に優れ、チームメートや相手のことを把握していた。若い選手たちは必要以上に話しかけられたり、長々と話をされたりすることを好まない。自分を信頼し、必要なときに的確なアドバイスをしてくれる背中で語るタイプを求めている」と説明した。

 

人を見て正しく評価し、信念と覚悟を持って仕事を任せる。井口監督の姿は、部下を持つ企業の管理職の教訓にもなりそうだ。

By New Road 編集部

スポーツメディア「New Road」編集部 読者の皆さまの心を揺さぶる、スポーツのさまざまな情報を発信しています!